「な、何アホなことしてくれとるんやオサムちゃん…!」

「ええやろええやろ、前も勝ってたやないか」



オーダーのD1には俺の名前と忍足謙也、と謙也くんの名前が癖のある字で書かれている。よいではないかよいではないかと時代劇でよく行われる茶番が脳内に思い浮かんだのは致し方ないことだ。



「本当はなあ、謙也にシングルスを頼もうと思ってたんやけど断られてもうてな。でも財前は今回シングルスで出したいし、それならいっそお前ともう一度組ませてみようと」

「……? 謙也くんがシングルス嫌やって言うたん?」



そう問うと、オサムちゃんはご機嫌だったその表情を渋い顔に変化させた。どうやら俺には言いたくないことのようだが、そこまでされると聞かないのも気分が悪い。促すと、オサムちゃんは渋々といった具合に口を開いた。
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