15 「OB練明日だから用事入れたりしないでね!」 徹くんが車で迎えに来た火曜日。帰りにはずっとその話題でもちきりで、どこどこのポジションの生徒をアイツがこう指導するんだけど〜、とバレーに詳しくないわたしにも何となくわかる様に説明してくれた。そんな説明も覚えてるんだか曖昧になっちゃったけど、気付けば水曜の放課後になっていた。時の流れってコワイ!いつもみたく、何とか終わらせた授業のまとめを会議室で書いてると、どやどやと騒がしい音が廊下から聞こえてきた。今はHRも終わって掃除の時間のはずなんだけどな。いつもこんなうるさくなることはないのに。そういや、徹くんがHRから戻って来てない。荷物はまだあるし、部活に行ってないと思うけど……。 ガチャガチャガチャッ!ドンドンドン! 「ひいっ!」 急に会議室の後ろのドアノブがガチャガチャと周り出して、誰かがドンドンと扉を叩く音が部屋中に響き渡る。ちょっと待ってよ、悪戯にしても限度があるよ。急にシーンと静まり返った会議室で一人冷や汗をかく。あれ?これ悪戯だよね?まじで心霊現象とかじゃないよね。確かめに行きたいけど、あまりにも静かすぎる。悪戯なら走って逃げたり足音がするはずなのに何も聞こえない。まだ、そこにいる…?反対のドアから覗いてみようと、ドアノブを握ったその時、また同じところからドンっ!と大きな音が鳴った。ちょっと、むりむり!一人の時にこんなのされたら…! ムリだ。怖い!スマホを取り出して急いで電話をかける。どこで何してんだかわかんないけど、出てくれることを祈っ……うわあああ後ろの徹くんの鞄からバイブの音がしてる!どうしようわたしこのままじゃ、 ガチャッ 「あれっ、マッキー。紗希乃ちゃんいるよ?」 ていうか、なんでしゃがんでうずくまってるの?膝を曲げて覗き込んできた徹くんの顔は不思議そうにきょとんとしていた。 「ど、どおるぐん……!」 「えっ、ちょっと紗希乃ちゃん何で泣いてんの?!」 「だってさっき変な音が、」 「なんだ吉川いんじゃん」 「……花巻?松川くんも……」 徹くんが差し出してくれた手をとって立ち上がると、徹くんの後ろから花巻と松川くん。それと見たことない男の子たちがぞろぞろとやって来た。ニヤニヤ笑ってる花巻と松川くんの顔を見てわたしは気付いた。そうか、そういうことか。 「花巻このやろう!!!」 「ギャッ!脛はイテーよばバカ!」 「バカはあんただよ!もー信じらんない!なんで松川くん止めてくれないの!」 「楽しそうにドア叩いてましたよ」 「あっコラ国見」 「有益な情報ありがとう」 「うっ、膝もっとダメだから!」 「うるさい二人とももう信用ならない!」 「すぐ叫ぶかと思ったんだって」 「ちょっと脅かしたらやめるつもりだったし。な?」 「そうそう。声聞こえねーから、いないのかと思って」 「だったらすぐにやめてよ!」 花巻と松川くんがやいやい言い返してくるから、徹くんの後ろに回って顔だけ出して、わたしも言い返す。もうほんと信じらんない。花巻のやつ、わたしが怖いの苦手だって知ってて松川くんにけしかけたんだ。徹くんが来なかったらずっと続けてたかもしれない。あっ、そういや徹くんさっきから何も話してなくない…? 「徹くん……?」 「アッ、え?なに?マッキーがバカって話?」 「……なんかめちゃくちゃにやついてないですか徹くん」 「いやあ、おもしろくてさ」 「なにが」 「紗希乃ちゃんが」 「……」 「あああ距離置かないでお願い!馬鹿にしてない!してないよ全く!」 「やっぱりそっち側につくんだ……」 「そっち側ってなに紗希乃ちゃん?!」 |