蒼の双眸(FGO×DC)

B


探偵団に加えて藤丸立香も一緒にポアロへ行った日の夜のこと。

「ちょっと博士の家行ってくる!」
「気を付けるのよ、コナンくん」
「はーい。行ってきます、蘭姉ちゃん」

スケボーに乗って、博士の家に向かうこと早数分。あっという間に目的地へと辿り着いた。呼び鈴を鳴らして、そのまま中へと入って行けば博士と灰原がテレビを見ながら寛いでいた。

「おい、灰原。何かわかったか?」
「あれは一体何?調べたって別にどうってことなかったけれど」
「新一、哀君に何か頼んでおったのか?」
「ああ、少し気にかかることがあってさ」

スケボーを壁に立てかけて、灰原の隣りに腰かけた。灰原がスマホを片手にオレの目の前に画面を差し出す。受け取って画面を覗き込むと、そこには英字が連なっていた。

「……London Bridge is broken down,Broken down, broken down.……ってこれマザーグースの唄じゃねーか」
「そう、マザーグース。トミー・サムの可愛い唄。イギリスで伝わるナーサリーライムのひとつね」
「ナーサリーって!」
「そうよ。貴方が調べてくれって言ってた"ナーサリー"で思い当たるのなんてこれくらい。ナーサリーだけじゃ、意味的には人名に使うものではないし、かと言ってナーサリーライムにしたところで"わらべ唄"にしかならない。何かのコードネームの可能性は捨てきれないけど、少なくともお酒の名前ではないわね」

オレ達のクラスメイトの藤丸立香。年の割には落ち着いてるし、いろいろ知識が豊富なように見える男の子。引っ込み思案という程ではないが目立たないように静かに過ごしている。そんな彼を少年探偵団に引き入れたいと光彦たちが躍起になっていた。少しだけなら、とあいつ等に付き合ってポアロに一緒に向かった先での出来事たちに疑問ばかり浮かんでくる。あの日の安室さんは変だった。

「それで、この童話の総称に何の用があるのかしら」
「ポアロで藤丸が電話していた相手に『ナーサリー』と呼びかけたんだ」
「ただのニックネームかもしれんがのう」
「そーかもしれねーけどよ。なんか変だったんだよなあ、藤丸のやつ。しかも、安室さんに自分から話しかけに行ってさ」
「珍しいのね。彼ら、知り合いだったの?」
「いや?自己紹介してた。ただ、安室さんも気になってる感じだったのも気にかかる」
「ホォー。彼は何と?」
「どんな子なのか、とか、どの辺りから通ってるのか、とか。ああ、それと、親についても聞かれたな……って昴さん?!」
「お話に割り込んでしまってすみません。シチューを持ってきたんですが、呼び鈴を鳴らしても誰も出て来られないので入って来てしまいました」
「貴方また生煮えの料理持って来たんでしょう!」
「やはりどうにも上達しませんね。少し見て頂いても?」
「……仕方ないわね」

困ったように笑う昴さんからもぎとるように鍋を奪い取った灰原はキッチンの方へと消えていく。追いかけていく博士を見送りながら、オレは小さく声をかけた。

「ねえ、昴さん。昴さんも、心当たりは無い?」
「先ほどの彼女の話程度でしょうか。ナーサリーライムの中にヒントはあるかもしれませんが」
「ナーサリーライムの中に…?」

組織に関係している線が薄いのだとしたら、きっと安室さん個人の関係者なのかもしれない。それでも、組織のバーボンとして今も活動し続けている安室さんに関係があるのだとしたら少しでも情報を掴んでおきたい。…あの人、結構はぐらかすからさ。





「安室透という人は…どんな時でも自分の正義を貫く、すごい人だよ」

へえ、そうなんだ。と、自分でもビックリするくらいコナンくんの言葉をそのまま受け止めることができた。母さんも正義感が強いって言ってたっけ。あの人がどこで何をしているかっていう情報よりも欲しい言葉が手に入ったような気がして、自然と口元が緩んでくのがわかった。

「ありがとう、コナンくん」

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