蒼の双眸(FGO×DC)

C


「こっちの道よりあっちの角を曲がって行った方が早く帰れるんじゃねーか?」
「まぁね。ただ、母さんとの約束だからさ」
「藤丸、おまえ毎日決まった道帰ってんの?」
「そうだよー。直帰するときはもっぱらこのルート」
「この前ポアロ行った時はどうやって帰ったんだ?」
「さっき通りすぎた二つ前の道からこの通りに出たよ」

図書館を後にして二人で一緒に帰ることになった。コナンくんは「二つ前…」と呟きながら顔だけ後ろを振り向きながら何やら考え事をしてる。

「お前んちの母さん心配性なんだな。二つ前もここも、全部大きめの通りだ」
「おー、よくわかったね。そうそう。人の通行が多くって、路線バスがそれなりの頻度で通る道が判断基準かな」
「暗くなったらバス乗れって?」
「そんな感じ。その前に迎え呼ぶんだけどさ」

小学校に入る前に越して来たマンションのある通りに差し掛かる。彼の家はもう少し遠いみたいだし、コナンくんとはここでさよならしなくちゃ。それじゃあ、また明日。そう言って互いに背を向けて歩き出した。今日は母さんの帰りが遅くなるって言ってたからエミヤご飯だなー。昨日は洋食だったからたぶん今日は和食かも。なんて考え事をしながら家の方に歩いてく。向こうからゆっくり歩いてくるスーツの男の人を何となく目で追いながら進んでけば、相手も眼鏡越しにチラリとこっちを見た。……おかしい。この人、この辺の人じゃない。誰か気付いてくれないかな。マンションの上層階を見上げてもどの窓もカーテンがとじてひっそりしている。大声を出せば気付いてもらえるかも…。男の人とすれ違うその時、息をめいっぱい吸って大声を出しながら駆けだした。

「うわあああああああ!」
「なっ、」

後ろから声をかけられてるようだけど気にしてられない。小さい頃から色んなことに巻き込まれてきた。人類最後のマスターだったオレが生まれ変わっていることをどこかから嗅ぎつけた魔術師たちによる襲撃、画策……オレだけで済んだらよかったのに、母さんまで狙われて大変な日々を過ごして来た。そんなのもう嫌だ。自分で逃げられるのなら逃げ切ってやる!

『お祓い行った方がいいのかなあ』

いつだったか真面目な顔で零した母さんの呟きが突然頭をよぎる。えっ、なにこれ走馬灯?オレあの眼鏡のおじさんに掴まってサヨナラしちゃう?いやいや母さん、お祓いとかダメだって。めちゃくちゃ偏見だけど寺とか協会とかそういうところは英霊関係の何かしらありそうだし、魔術知ってる人間絶対いるから!

「あ、と!すこしっ……!」

マンションの門まで、あと3m。たかが3m。されど3m。短い手を懸命に伸ばす。門に入ってしまえばこっちのもんだ。だって、この先はうちのキャスター陣の最高傑作ともいえる結界が張ってあるんだ。絶対に負けてなんかやるもんか!

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