蒼の双眸(FGO×DC)

似た者同士の話


後悔しない?と念を押されるように訊ねられたのは私の人生において何度あったことだろう。嫌だとか、理解できないことだとかそういったことはわりとある。だけど、一旦受け止めてみてじっくり考えたい性格なんだと思う。だから、周りから見たら流されて物分かりのいいフリの上手い人間に思われる。

「そんな人間では決してありませんので勘違いしないで頂きたいです」
「それを俺に言われても困るんですけど藤丸さん」
「このままだと私、降谷くんを受け入れてしまいそうなの。そこはストッパーが必要だと思って」
「それ聞いたら尚更困るんだけど?!」

諸伏くん。彼は降谷くんの親友でいつも一緒にいるくせに、最近はフラッと姿を消して降谷くんと私を一緒にしようとする。そういうのは求めてない!と啖呵をきりに来たわけだけど、怒るに怒れないのが難しい。だって、諸伏くんは何も悪くない。むしろ最初の頃なんか降谷くんよりも私をフォローしてくれた。あれ?めちゃくちゃ良い人じゃない?とちょっと思ったのは内緒。

「ゼロのこと嫌いじゃないんだろ?」
「嫌いじゃないよ。好きにもなりたくない」
「なりたくないってことはもう好きになってるってことでいっか」
「全然よくないよ?!」

なんでそうなる。私の事ストーカーだと思ってた人と付き合うって実際どうなんだと考えたら好きか嫌いかどかじゃなくって普通に無理じゃない?と思ってしまう。後から笑い話にできるのかなあ。いやでも、数年後もこの話を引きずるほど私の脳内に降谷くんが侵食してくるのを食い止めなければ。

「まあでも二人ともその辺に関しては不器用そうだからなー」
「諸伏くんが私のこと知ってる体でいるのに異議があります」
「いや、だって似てるもん二人」
「はい……?」
「あの教授の授業、確かに面白いんだけどさ、引っ張ってくる文献とかそっち行くの?とか思うわけ」
「そっち、って」
「俺じゃ思いつかないとこだったりさ、意外な箇所を拾うしさ。こりゃ二人とも考え方似てるんじゃ、って思うよ」
「……そんな遠い関係性の文献拾った覚えないんだけど」
「ぶは!それゼロとまるっきり同じこと言ってる!」
「……仮に、そうだとしても!人の事ストーカー呼ばわりする考えなんか私は持ってないもん」
「えー?だって、藤丸さんアイツにどんだけ恨み持ってんのってくらい睨んでたじゃん」
「いつ?」
「自覚無し?たぶん、君ら二人とも互いに睨みあってたと思うよ」
「……向こうが睨んでくるから……」
「ヒィ!それもゼロと同じこと言ってる!」

ゲラゲラとお腹を抱えて笑っている諸伏くんは、「お願いだから無自覚でそういうことするのやめて」と何かに懇願している。べつに狙ってやったわけじゃないからして大変に不服である。なんでこんなことになるかな〜〜。

「もう気づいてるだろうけどさ。アイツ、きっと君に優しくしてくれると思うし大事にしてくれるよ。喧嘩っ早くて、へそ曲がりなとこもあるけど、一緒にいて楽しいと思う。だから、安心して飛び込んでいいよ」

じゃあね、と去っていく諸伏くんを追いかける気にもなれなくて、近くにあったベンチに座る。バッグのポケットに入れていたスマホに着信でもあったのか、長く続く振動がベンチにも伝わって、バイブレーションの音がやけに大きく聞こえた。画面を見てため息。この前押し負けて、ついに連絡先を教えてしまったんだった。

「もしもし」
『もしもし。降谷だけど、忙しいところごめん、この前言ってたことなんだけどさ』
「……ん」
『何かあったか?』
「なにもー」
『なんかいつもと反応が違うぞ……?』
「私は至って普通ですよ」
『そうか?』
「そうなの」
『……ならいいけど、あー、その。無理ならいいんだけど、この前一緒に行こうって言った、』
「いいよ。行くよ」
『本当か?!』
「うん。次の日1限だから、あんまり遅くならないなら……って通話切れてる」

それからすぐにメッセージで『ごめん、動揺した』と馬鹿正直に送ってきた降谷くんが何だかやけに面白く思えてきてしょうがない。あーあ。この選択が吉と出るか凶と出るか……。今はまだわからないけれど、全力で押しまくってきた諸伏くんは最後まで見守る義務があるよね。さて、降谷くんと出かけるのであれば新しい服を用意しよう。あの顔面に負けないように精いっぱいおしゃれしよう。付き合う付き合わないとかこれからのことはとりあえず置いておこう。まずは一回、ちゃんと向き合ってみる。話はきっとそれからだね。

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