不思議の国に迷い込む
不思議の国はどこかしら。案外近くにあるかしら。地面のウラにあるかしら。それともお空にあるかしら。元居た世界が日常ならば、きっとここは不思議な世界。ぐるぐるおんなじ日を巡る。二度目の今日はちょっぴり驚き。三度目の今日は変化を期待。四度目以降は、あぁまた今日か。みんなが揃って肩を落とす。
「不思議な不思議な男の子。十年足らずの保証期間は、とっくの昔に過ぎたのに、身体だけが戻ってる。中身はどんなものかしら。やさしい世界に戻れるかしら」
わたしは今日も思いを馳せる。マスターは身体は小さいままだけど、中身は昔と変わらない。あの男の子ときっとおんなじ。おんなじならばきっと仲良くできそうね。
王様たちはみんな言う。あの子に世界を託せるのかと。できる？できない？どっちかしら。世界をかけてもいいけれど、たぶん、わたし達の世界は救えない。あの子が救えるのはあの子の世界だけ。ヒーローが一人の時代は過ぎ去って、今はたくさんヒーローがいるの。世界がきちんと救えるのなら二人になっても問題ない。あの子はあの子の世界を救い、マスターはわたし達の世界を救う。それってとってもわかりやすい！シンプルな物語は嫌いじゃないの。ハッと驚くようなお話もいいけれど、想像した通りに進んでいくのも悪くない。え？マスターはヒーローじゃないって？それは今の世界じゃそうだけど、元の世界じゃ英雄よ。それにね、悪者にだって物語はあるの。あの子から見たマスターが例えば魔王のようなものだったとしてもね、マスターにはマスターの物語があるのだわ。それがバッドエンドで終わるのかハッピーエンドで終わるのか、今は誰にもわからない。
ハッピーエンドはまだかしら。不思議の国もいいけれど、バッドエンドに向かってる。そんなのとってもつまらない。せっかく不思議なお話なのにつまらない終わり方をするなんてもってのほか！
本当の世界はどこかしら。ループが止まれば戻れるかしら。二つが混ざった時はぐるぐる巡るもっと前。だったら元には戻れない？戻れば何がどう変わる？ああ、はやく先のお話が読みたいの。だからね、わたしは今日もたくさんたくさんお仕事しよう。ああ、お母さまが呼んでるわ。きっとお夕飯の時間ね。今すぐお家に戻らなきゃ。お父さまとお母さま二人のハッピーエンドはどうかしら。見れたら世界はどうなるかしら。たくさんのハッピーエンドを想像してはまだまだ先ね、と肩を落とす。そろそろ大きく動きそう。役者がだんだん揃ってきたの。これならしばらく安心ね。
不思議な世界はいつまで続く？今日も答えは出ないまま、わたしは幸せな結末を夢見てる。