蒼の双眸(FGO×DC)

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「待って!ここでその話は……」

2人のセイバーが言った、薬で小さくなったという言葉。ここでその話を進められたら困る。だって、この部屋には赤井さんの仕掛けた盗聴器が設置されてるんだ。赤井さんはおそらく俺の正体に気づいてはいるんだろうけど、アポトキシンのことや詳細を知っているわけじゃないはずだ。それを知られるのは少なくとも今じゃない。

「失敬。知っていると思っていたもので……」

2人のセイバーの視線が窓の外を探るように動く。知ってるって、オイオイまさかとは思うがこの人ら赤井さんのことすでに知ってんじゃねーのか?!人とは違う存在の彼らのことだ、俺らよりも情報を集める方法をたくさん持ってる可能性は大いにある。……そうか。この人らは知っているからセイバーと名乗ったんだ。サーヴァントは英霊で、それぞれの生前の名前を現在も持っている。藤丸はこの人たちの本当の名前を知っていて、さっき本名で呼ばれるのを止められていた。俺や灰原を警戒しているからかと思ったがこれは……

「お兄さんたち、どこまで知ってるの?」

2人のセイバーは顔を見合わせた。それは、どこまで話すべきかを迷っているようにも見えたし、話すこと自体渋っているようにも見える。短髪のセイバーが口を開こうとしたのを、長髪のセイバーが首を振って引き留めた。困ったように笑って、未だ戸惑っている様子の藤丸を見つめながら話し始めた。

「少なくとも、外の彼については我々も審議中なのです」
「審議中?」
「ええ。我らが主に害をもたらす存在かもしれませんからね」
「……あの人は悪い人なんかじゃないよ」
「不安にさせてしまったのなら申し訳ない。ただ、我々は世間一般でいう善悪を問うているわけではないのだよ、シルバーブレッド」
「アンタは……!」
「だいぶ時間を使ってしまった。そろそろ戻らねばアサシンの奴が臍を曲げてしまうだろう」
「もう行くのですか」
「ああ。バーボンに入れ替わっていることを今知られては面倒なのでね……」
「待って、セイバーさん!今バーボンって!」

短髪のセイバーは有無を言わせないようにオレの前で深々と礼をしてから、藤丸の前に片膝をついて頭を垂れた。

「セイバー……」
「心配は無用ですよマスター。貴方様が息災であることが何よりの近道です。だからどうか、身も心も病むことなく正しいと思った道を進んで頂きたい。そうすればきっと、この世界も母君も報われるでしょう」

直に再び会いましょう。そう告げた短髪のセイバーは金色の粒子となって姿を散らしていった。姿を消せると聞いてはいたものの、実際に目の当たりにしてみるとその不自然な現象に驚きを隠せなかった。同じく驚き慌てふためいている博士。そして、その後ろに隠れるようにしていた灰原は残ったセイバーも消えるんじゃないかとじっと彼を見つめている。

「ちょっと江戸川くん、ちゃんと説明してくれる……?!」
「いや待て、聞くのと見るのじゃワケが違くてよ…!」
「本当にただ聞いてるだけじゃ、何にもならないね」
「マスター……?」
「マシュの身体が弱くって海外にいるって皆が言っていたのは大外れってわけじゃないんだろうけど、正解じゃない。皆は俺を守ろうとする言葉での情報しかくれてなかったんだ。きっと、知れば俺が傷ついたりするようなことがこの世界にはたくさんあるんだろ?だからマシュのことみたいに隠してる」
「なあ、藤丸。お前は組織のことは知らないんだったよな?」
「うん。知らない。知らないけど、セイバーたちが知ってるんだろうってことは何となくわかるよ」
「オレ達はその組織をずっと追ってんだ。セイバーさんたちが組織について何か知ってるんだったら情報を教えてほしい」
「残念ながら、私は彼と違ってその組織に属しているわけではありません。ただひとつ、誤解しないで頂きたいのは彼らがあの組織と繋がっている理由はただひとつ」

「マスターのために役立ちたいからですよ」

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