蒼の双眸(FGO×DC)

A


学校のウサギ小屋の後ろで落ち葉の上にあぐらをかいて、コナンくんと向き合って座る。秘密めいたやりとりをまさかクラスメイトとすることになるなんて思ってもなくて内心ドキドキしていた。他の誰かにバレやしないだろうか。まあ、サーヴァントたちがいるから問題ないんだろうけどさ。

「つまり、過去の偉人を英霊としてこの現代に召喚したのがサーヴァントで……」
「俺たち人間からしたら信じられないようなことも彼らにはできてしまうんだ」

神妙な面持ちで、考えを巡らせているだろうコナンくんはゆっくりと視線を周囲に滑らせた。きっと視覚で認知できない存在を探っているんだろうな。この辺にはいないよ、と伝えると小さくため息を吐いた。

「サーヴァントっていう人間じゃない存在が実在しているっていうのは、さっきの男の人の説明できない動きで何となくわかった。だけどよ、彼らがこの世に召喚される条件や召喚され続ける条件はないのか?俺や普通の人間が認知できていないだけでサーヴァント達が溢れかえってる、なんてわけじゃねーんだろ?」
「魔術師がいれば召喚できる可能性はあるから思ったよりもいるかもしれないけど、溢れかえってるってほどいるわけじゃないよ。召喚にももちろん条件があるし、条件を満たしても確実に召喚できるわけでもない。召喚し続けるには魔力の供給が必要になるんだ」

そういえば、みんなの魔力供給はどうなってるんだっけ。カルデアからの魔力でたくさんの英霊の魔力を補っていたけれど、今はどうなってるんだ?

「藤丸?どうした?」
「……なんで、今まで考えてなかったんだろう」

みんなとのカルデアでの思い出は簡単に思い出せる。俺がマスターで、みんなと種火周回したり、レイシフトしたり、たくさん旅をした。そんなことは思い出せるのに、みんなの魔力の元や、一度死んでみんなのマスターじゃなくなったはずの俺の元に再び同じサーヴァントが現れて、記憶が記録にならずに保持したまま令呪までそっくり元に戻った。そんな英霊召喚においておかしい出来事に今までなにも気がつかなかったなんて。

今の俺の仲間の魔力はどこから供給されているんだろう。

考えれば考えるほど靄がかかったように思考がぼんやり滲んでいく。ぼやけた疑問の答えに辿り着けない俺の肩を揺さぶるのは不思議な薬で小さくなっちゃったっていうクラスメイト。本当は高校生探偵だっていう工藤新一その人だった。


*


何かを選ぶタイミングが来た時に、なんとなくで選んだ選択肢には心のどこかで後悔してしまっていることがままある。きっと、たられば話がよぎってしまい不安を煽っていくからなんだろうね。後悔しないようにしていたって後悔する時はあるもので、腹を括って覚悟を決めて選んだものへの後悔は不思議と後に残らない。一瞬の揺らぎはあったとしても尾を引かずに、しょうがなかったと諦めがつくのだった。

「どうせ何かしら理由を見つけて後悔してしまうんなら、好きなようにやって後悔した方がいいわ」

夢から醒めたばかりで意識が若干ぼやけているけれど、こればかりは揺らがない。私の選択は今まで通りに変わらない、そう伝えて赤い瞳を見つめ返せば、ソファに身を預け腕を組んでいたギルガメッシュが高笑いし始めた。

「フハハハハ!よい!貴様の選択、確かに受け取った!」

ひとしきり笑い終えてから豪華絢爛なソファに預けていた身体を起こし、立ち上がったかと思えば彼は鼻をフン、と鳴らす。視線は閉じたままのエレベーターを辿っていた。

「仕事の時間だ。貴様は貴様の役目を果たせ」
「役目?」
「そうだ。紗希乃、貴様は物語の重要な鍵には成り得ぬが、それらを繋ぎ留める役割ぐらいはできるだろうよ」

なんだ不服か?と愉し気に口角をあげるギルガメッシュ。これが不服じゃなくって何と言うの。ぼやかした曖昧なことしか言わないくせに役目を果たせ、だなんてさ。

「無知なだけでは問題ない。無知であることを知らぬことの方が問題だ。その点、貴様は己が無知であると理解していて尚、無知のままでいることを受け入れている」
「だってそれは立香といたいのならそうしなければならないって!」
「そうだ。今まではそうだった。そうである必要があった」
「……必要っていうけど、ただ都合のいい駒が欲しかったんだわ」
「否定はせん。我々にも手が出せぬことがこの世界にはある。貴様が鍵を繋ぎ留める役割を持っているのだとすれば、使わぬ手はない」

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