蒼の双眸(FGO×DC)

A


その赤に、ぎくりと心臓が跳ねるのを目の前の彼は知っているだろうか。恐れにも似たこの感情は、最初よりも打ち解けてきた今でも拭いきれないし、忘れた頃に思い出す。ギルガメッシュだけじゃない。他のサーヴァントたちの中にも同じように感じる人がいる。きっと彼らは―……

「さて、選択の時が来た」

……立香の邪魔になるのなら、母親ですらも排除するに違いない。


*


『いつかちゃんと、母さんと父さんを会わせてあげるのがオレの夢!』

おそらく確信を持っていて、希望に満ち溢れていたあの笑顔がどこにも見当たらない。安室さんのことを藤丸に話したのは少し前。父親の話をしたのはつい最近。この短い時間で何か起きたのか?見覚えのあるようなぎらつく蒼に、思わずたじろいでしまった。

「……どうしたんだよ、藤丸。怖えー顔してさ。安室さんのことは前に教えただろ?」
「安室さんは、どんな時でも自分の正義を貫く人だってコナンくんは言ったよね」
「うん。言ったよ」
「そんな正義感に溢れるあの人の正体が知りたいんだ」
「正体って、探偵だよ。私立探偵してるって聞いただろ?」
「本当に?」
「疑う余地もない。ちゃんと探偵の仕事をしてるところ見たことあるぞ」
「……本当に、それだけなのかなあ」

顔をしかめたままの藤丸は、首を傾げて唸っている。それだけ。それだけって?まるで、安室さんが他の顔を持っていることに気が付いたみたいな物言いじゃねーか。どこで疑いを持ったんだ?まだ唸っている藤丸から目を逸らせば灰原と目が合った。小さく首を振ったアイツの言いたいことはわかる。一旦ひかないと、まずいことになりそうだと思ったその時、先生が教室に入ってきた。……あ、そっか。今はホームルームの前だった。強制的に離れる機会ができて内心安堵していた。にしても藤丸はどうして安室さんを怪しみ始めたんだろうか。ポアロに行ったときは何も……そうだ、ポアロだ。ポアロに行った時にいたのは、"セイバー"。その時の会話でわかったのは他にもセイバーがいることに、安室さんはそのセイバーと会ったことがあること。そして、あの女性のセイバーは言っていた。

『立香、彼は仕事をしているのです。心配は無用ですよ』

――仕事をしていると。仕事をしているセイバーと会ったから怪しまれたのだとしたら、セイバーの仕事が良いものじゃない可能性がある。つまり、組織に関係する仕事である可能性も捨てきれない。こうしちゃいられない、はやく情報を集めなくては。そうしなければ、藤丸の正体…いや、藤丸のバックにいる、あのマンションの住人の正体次第ではまずいことになるかもしれない……!

「アイタタタ!ボク、急にお腹痛くなってきちゃった!先生、保健室に行ってもいい?」
「江戸川くん大丈夫?先生がついていきましょうか」
「ううん、一人で行けるから大丈夫だよ!」

ポケットにスマホが入っているのを確認して、教室を飛び出した。今ならどのクラスも朝のホームルームをしているから体育館の裏口なら誰も来ない。あがる息を整えながらスマホで博士の番号を呼び出した。

「もしもし、博士?ちげーよ、ちゃんと学校にはいる。それで頼みたいことがあるんだ。セイバーっていう呼ばれる人物の情報があれば洗い出しといてほしい。言語は問わないし、本名とか正式名じゃなくていいんだ。そもそも愛称らしいし……。それと、昴さんに伝言を頼む。セイバーという名称を組織で聞かなかったか、もしくはFBIの中にいなかったかってな。ああ、ひょっとするとまずいことになるかもしれねーんだ。……あんまり俺が動きすぎると怪しまれるかもしれないからこれで切るぜ。あ?ちがうちがう。オレが薬で小さくなったって気づかれたらまずいかもしれないやつが……」

ザリ、と土を踏む音が聞こえた。反射的に顔をあげると、その先にいたのは……

「……藤丸!」
「ええと、ごめん。盗み聞きしたかったんじゃなくて」

なぜか忍者のような恰好をした男の人に背負われている藤丸がそこにいた。

「コナンくん、薬で小さくなっちゃったんだ?」

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