蒼の双眸(FGO×DC)

A


「藤丸!!」
「おはよ、コナンくん」

ここ最近、教室に入ろうとすると少年探偵団の3人が待ち構えていることがよくある。今日も元気にやってくるのかなあと思っていたのに、今回に限ってはそうじゃなかったみたいだ。血相を変えたコナンくんが下足ロッカーの前で仁王立ちして待っていた。後ろには呆れた顔で待ってる灰原さん。なんだなんだ、今日は何か特別なことが……?!

「あの人は一体なんなんだ?!」
「あの人?」
「水着でバイクを乗り回してるあの女の人だよ!」
「あー、うん。水着が法律に触れそうで怖いよね」
「そういうことじゃねーよ!」

今んとこ警察に通報されてないし、何より彼女は普通に霊体化できるから何の問題も今の所起きてないけど普通に考えたら色々おかしいよね、うんうん。コナンくんにあのマンションの住人だと説明してもメイドオルタの存在を消化しきれてないみたいだ。

「もっと変な人いっぱいいるから、気にしない方がいいよ〜」
「何のフォローにもなってねえ!」

*

「帰りにポアロに寄ろうと思うんだけど、2人はどう?」
「オレはいいけど」
「私はパス」

もっと変な人がいると遠い目をしている藤丸を連れて灰原と3人で教室へと向かうことになった。灰原はここ最近の藤丸周辺の出来事を実際に目にしていない。水着の外国人に掻っ攫われる勢いで事務所前に置き去りにされたことを話しても一体何の冗談だと笑われるだけだった。だったら藤丸に確認してやるから見てろよな、と連れてきたけど謎は一向に深まるばかり。

「ケーキを買って来てってナーサリーに頼まれたんだ」
「藤丸くんとその子はどんな関係なのかしら」
「ナーサリーと?」
「ええ。江戸川くんから先日のことを聞いたのだけど、あまりよくわからなくって」
「家族みたいなものかなぁ」
「頼光さんやあの水着の人も?」
「うん。他にもいるみんなも全員家族みたいな存在!オレには母さんしかいないけど、毎日何も寂しくないのはみんなが側にいてくれてるからなんだ」

片親だとは。藤丸との会話を思い返してみれば確かに母親の話題こそ出ても父親については全く出てくることはなかった。……ん?待てよ、父親?

「……藤丸はお父さんいないのか?」
「うん、いないよ。コナンくんもいないんでしょ?」
「江戸川くんのご両親は海外にいるから探偵事務所に預けられてるだけよ」
「そっか!遠い所にいるだけなんだね。うちは元々お父さんいないんだ」
「もしかして会ったことねーのか?」
「うん。母さんはオレが生まれる前に父さんとお別れしたんだってさ」
「……」
「オレは父さんがいないことで寂しい思いはしたことないけど、母さんはそういうわけじゃないだろうから」

「いつかちゃんと、母さんと父さんを会わせてあげるのがオレの夢!」

会ったことがないはずなのに、両親が再会する様を具体的に思い浮かべているような様子を見て腑に落ちた。間違いない。ポアロでの安室さんのあの様子と、普段とちがう藤丸の行動。それから、まるきり同じといっても過言じゃないくらい似ているあの目の色。藤丸立香はきっと――

「叶うといいな」

――…安室透の、いや、降谷零の息子だ。

「うん!叶えてみせるよ!」

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