拍手ログ 戦争はよくないことなので


※大遅刻ですがバレンタインの話です。



「ハッピーバレンタインでーす!」

本日も徹夜続きでフラフラした人間ばかりのその空間にやたらと明るい声が響き渡った。屍が息を吹き返したように歓喜の声を上げる。一体どんなB級ゾンビ映画だ。声の主である俺の後輩(幼女)はパンパンにお腹を膨らせたうさぎのリュックを背負って警備企画課内を練り歩く。奥にデスクのある島から何やら順番に回っているらしいが、どいつもこいつも喜んだかと思ったら周囲の奴と言い争ってる。なんだ……?そんな分かりやすいくらいチョコに差があるのか……?!いやいや。元々あいつはこんなマメなことをする性質じゃなくって、お徳用パックを数個置いてセルフでどうぞタイプの女だ。一体何を……?!

「次は風見さんですね、ハッピーバレンタイン!」
「あ、あぁ……」

お腹の膨らみが小さくなったうさぎのリュックの背中のジッパーを吉川はゆっくり開けた。

「風見さんはきのこ派ですか?たけのこ派ですか?」
「……は?」
「きのこ派?たけのこ派?」
「き、きのこ……?」
「吉川承知致しましたぁー!」

うさぎの背中からズルズルと引っ張り出されたそれには、き●この山とたけ●この里と書いてあった。個包装で4連くらいに繋がっていて、切り取り線で切り離せるタイプのそれ。ズルズル引っ張りだして、ビリビリ引っ張られ、残りはブラブラとうさぎの背中から垂れ下がる。おいおい、B級映画要素はゾンビだけで結構だよ。なぜ内蔵みたいにうさぎにしまった。


「はいどうぞハッピーバレンタイン!」
「……吉川」
「はいなんでしょう風見さん」
「俺はきのこと言ったはずなのに手渡されたのはたけのこなんだが……」
「そうですね。きのこって言った人にはたけのこあげて、たけのこって言った人にはきのこをあげてます!」
「なんでそんなテロ起こしてるんだお前は!」
「だって戦争はよくないことですし〜〜」
「新たな火種を撒いてどうするつもりだ!」

保護者は一体何してるんだ?一体なにをし……ハッ、もしやあの角からひょっこりはみ出してるビデオカメラは……

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