お好み焼き奇想曲

おもいで


オーダーをほとんど出し切って、みんなも落ち着いて食べるようになってきた頃、洗物はあとでやるしやることのないわたしは烏野高校男子バレー部に混ざって雑談をすることにした。

「ねー、ノヤ〜。潔子さんは来ないの?」

わたしの言葉に何人か噴き出した。え?驚くとこですかここ。

「え、ちょっ、君うちのマネージャー知ってるの?」
「あの美人さんですよね。ほんと、もう可愛すぎて…クールビューティー!!」
「おうおうおうお前わかってるじゃねーか!」
「当然だぜ龍!潔子さんがいかに素晴らしいお人かこいつに語り尽くしたからな!」
「こないだトイレで潔子さんが手を洗ってるのを見たんだけど、鏡越しに後光がさしてるの見えたよ」
「バッカおめー、潔子さんはトイレなんか行かねーよコラ」
「は?美人なのは出すもんだしてる健康体だから美人なんでしょーが!神様だって出すもんだしてるわ」
「ぐっ、正論すぎる…」

少し呆れたような顔を見せながらもぐもぐ食べ続けているのは1年生だろうか。ノヤよりかなりでっかいなあ。ひとり小っちゃい子もいるけど、ノヤとあんまり変わらなさそうだしなあ。そんな1年生たちをよそに、驚いたまんま固まってるのは先輩たちなのかもしれない。

「そういえば忘れてました。2年5組の吉川紗希乃っていいます。ノヤとは小・中同じです」
「ついでに家が同じ町内会なんだぜ!小学校の頃はこいつんちの仏間でみんなで遊んでた!」
「ぶ、仏間??」
「うっス。広くて涼しくて縁側ついてて遊ぶには持ってこいだったんスよ〜」
「え、木魚目当てじゃなかったの」
「木魚も欠かせねー!」

木魚の話をしていたら、残りのオーダーが出てくるらしく店長に呼ばれた。それを取りに行き、戻ってくると三年生から順に挨拶された。バレーをやっているわけでもないわたしにそんな丁寧にしなくとも!そういえば、ノヤがとても慕っているらしい旭さんという人はいっつも申し訳なさそうにしている人だった。体はきっと一番大きいのに、気持ちはとっても小っちゃいみたい。

「吉川さんはうちの2年の誰ともクラス被ってないんだな」

そりゃー気付かないわけだ、と納得したように澤村さんがうんうんと頷いていた。

「確かに2年目だけど誰とも被ってないですね。あー、でも、田中くんは何となく知ってますよ」
「エッ!なんで?!」
「去年の体育祭、野球選んだでしょ?野球部なのに何で野球に出てんだよ!!って他のクラスざわざわしてたんだよね」
「オレはバレー部だ!」
「プッ。坊主だから?」
「笑うな月島ァ!」
「龍がバレー部だって教えた時、紗希乃もめっちゃ笑ってたぜ!」
「んなぁっ?!」
「だって、女子がものすごくキレててさァ、『まぎらわしい頭すんな』とか言ってたの面白かったんだもん」
「まぎらわしくて悪かったですねコラァァ」
「女子相手にメンチ切るなよ田中!」


 


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