お好み焼き奇想曲

かえりみち


わいわい騒ぐバレー部は閉店時間より少し早目の時間に帰っていった。来店直後のように「あざっしたー!!」が店内に響き渡る。みんな満足そうにしていたのでよかったよかった。そうそう。1年生の中に自転車を山越えしてきている子がいるらしい。すご。あんだけ食べて山越えとか吐いちゃうよ。


「洗い物終わりそうか〜?」
「もーちょっとですー」
「いま流してるの終わったらあがっていいよ」
「はい!」

手元にある食器を急いで洗って、事務室に引き上げる。制服に着替えて、ローファーに履き替えた。

「お先失礼しまーす」
「おつかれー」

お店の玄関から出ると、向かいの植木のところにノヤが立っていた。

「おーす、おつかれ!」
「おつー。どうしたそんなとこで」
「待ってた!送ってやんよ」

へっへーん、とノヤが笑っている。お言葉に甘えて、うっすら電灯が灯っている道を歩いた。

「お前さァ、なんであのバイト選んだんだ?」
「制服がカワイイから。あの甚平みたいなのカワイイでしょ、色違いもあるんだよ」
「くっ…制服が理由かよ…それなら否定できねー!」
「ハハハ!」
「にしても帰り暗いんだから気ーつけろよ」
「うん。とは言っても商店街抜けたら後は一本道だからなあ」
「わかんねーよ?畑からヘンな奴がばばっ!て出てきたらお前は一発でサヨナラだ!」
「野菜泥棒とかもいるしねぇ」
「だろ?奴らがイモ掘ってんの見つけたら口止めに殺されっからな」
「野菜泥棒ってそこまで危険なのかなあ」
「おう、危険だ危険!そんなわけで、この烏野の守護神様が必殺技を伝授してやろう」

よーく見とけよ!と、ニカっと笑って、ノヤがカバンからボールを出す。

「ロォォォリングッ、サンダァァァァ!!!」

くるっと一回転して、ボールをレシーブする。ボールはアスファルトの上に落ちて、静かに跳ねていった。

「どーだ!スゲーだろ!」
「道路で一人バレーしてるのはすごいよね」

そもそもわたしはノヤみたくボールを持ち歩いてるわけじゃないしなあ。「回転しながらでもボールちゃんとあげれるんだね」、とノヤに言ってみると「まーな!」と嬉しそうに笑った。

「ボール持ってなかったらローリングサンダーできねーよな」
「よく気付いたね、問題はそこだ。それと、スカートだからね、わたし」
「じゃー、紗希乃がバイトある時送ってやるよ」
「えっ」
「今日は短かったけど、いつも何だかんだ自主練するしなー。それにもうちょい走りたかったしよ!お前がバイト上がるまで走っとくわ!」

回覧板とお好み焼きのお礼だ!ボールをくるくる回しながらノヤはそう言った。

「ノヤ」
「んー?」
「部活もどれてよかったね」
「おう!」
「そんで、ありがと」
「こっちこそだな」
「こ、これからよろしく!」
「任しとけ!」


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