よっす。オレ高尾和成!なんで自己紹介してるかって?自分でもよく分かんねえ。ついでに言うと何故オレがここに居るのかもわからねえ。今日は部活がオフでどうせヒマだから真ちゃんと遊ぼうとしてたとこで宮地さんに拉致られた。なんだこれ。ちなみにここは大型商業施設とでも言っておこう。そしてオレの周りにはカラフルなTシャツの人。人。人。
「宮地サン…なんでオレまでここにいるんすか」
「オマエがいねーとダメなんだよ」
さっぶ!さぶいぼ。やばい、なにこれ告白?真顔で返されたことも相まってダメージでけえ。
「待って。オレ男!」
「なに勘違いしてんだ高尾」
勘違いすんな。と言いながら手渡してきたのは黄緑色のうちわ。
「ん?うちわ…ってこれ紗希乃ちゃんじゃん!」
黄緑色を裏返すと、紗希乃ちゃんの顔がででーん!と載っていた。あれ待てよ?宮地さんの推しメンはみゆみゆ…しかも紗希乃ちゃんとは別な事務所だったはず(ってこの前宮地さんが言ってた)
「そうだ紗希乃ちゃんだ。いいか高尾。今日オレはみゆみゆではなく、ひとりの紗希乃ちゃんヲタとしてリリイベに来た。」
「ぶっふぉ、!アンタいつのまにファンになってんですか!ていうかリリイベってなに」
「リリースイベントだ」
「なるほど」
「それで、今日のお前は、オレの紗希乃ちゃん推しのヲタ友だ!」
「え、わかんないわかんない。オレなんもわかんないんスけどなんで?!」
苦々しく説明した宮地先輩曰く、みゆみゆ推しは続行で、すこしだけ紗希乃ちゃんに目移りしてるらしく、普段からみゆみゆ一筋だと周りに豪語してきたためにバレたら恥ずかしいらしい。そして、オレに誘われてしょうがなくリリイベに参加している体でいたいらしい。
「どうやら紗希乃ちゃんは今回の新曲で落ちサビの歌割りをゲットしたらしい……」
「落ちサビって何っすか」
「2番の歌詞の後にもう一度出てくるサビのことだよ!!」
「あーアレ落ちサビって言うの…」
「普通の曲でも言うだろが!」
「そこまでアツく語ったことないからわかんねえっす」
「くっ…オレは…!ようつべで先行配信されたMVの落ちサビの紗希乃ちゃんが忘れられなくてっ…!」
「(これアレだわ、ドルヲタとか関係なしにイタイわこの人)」