「帰れ。二度とくるな。」

ヒュッ息をのむ音が聞こえた。
「なっ何よ!結婚してくれるって言ったくせに!!ひどいっ!」
志保は顔を真っ赤にして鞄を掴んで玄関に走り去る。
「おい。」
引き止める男の声に女は振り返る。


期待とともに……。

「口紅、おいていくなよ。」
投げられた口紅を受け止めて、志保は悔しそうに玄関から出て行った。







口紅をおいていく女の魂胆がみえみえで腹が立つ。
どうせ忘れ物をしたとかなんとかいって、自分と接点を作っておきたかったのだろう。ほとぼりが冷めたら謝ってきて甘えてくるに違いない。

必要な財布や自分と連絡がとれる携帯をおいていかなかったのが証拠だ。


イライラする。

やはり、子育てにああいった女は向かない。派手で色気があって着飾るしか能のない女はやはり駄目だ。

かといって、安心して子どもを任せられるような可愛らしく家庭的な女はタイプじゃない。

子どもがいるからといって、自分のタイプではない女と付き合うことなど出来ない。ましてや抱くことなど無理だ。

自分は色気のある女をなかせるのが好きなのだから。


志保はその点だけは良かった。多少わがままでも金を与えてやれば大人しくなるしバカで仕事の事に口をださないし、実に扱いやすい女だった。

子どももいることだし、結婚してもいいかもな。と

ちょっとだけ
ほんのちょっとだけ思ったのだ。
だからこそ、慣れない育児を手伝ってもらおうと思ったのだが。

「家事すら満足に出来ないなんて話にならない。」
孝彦は志保の育児能力はおろか料理の腕すら皆無だった事を思い出し舌打ちをした。

あんな女に引っかからなくて良かった。
「これもお前たちのおかげだ。」
いまだえぐえぐと泣き続ける赤ん坊を見つめる。

「そうだ、理人。」
孝彦は慌てて携帯を手にとった。

もしものために理人に携帯を持たせておいたのだ。
正直、志保は信用ならなかったし何かあったら連絡するよう言っておいた。
まぁ、2歳半の理人に出来るかどうかは別にして

つまりは


孝彦の自己満足だ。


「まぁ、間違ってなかったな。」


孝彦は登録しておいた短縮ダイヤルをおした。




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