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not even or even




たまの休み
デートに出掛けた。
騒がしい街をショップ袋を提げて歩く
なんとなく田島の荷物も持ってやって
車道側を歩く俺の後ろをちょこちょこついてくる差のあるコンパス
遅れないように時々服の端を掴みながら。


「大丈夫か田島」


一応男である彼に、失礼だが尋ねてみる
だけれど田島は笑っていた
追っかけっこが楽しいらしい。
服の端を掴んでゴール
離して開いてく距離がスタート
どのくらい早く俺に追い付けるか。
毎日が始まり。毎日がゴール。

またきゅっと服を掴んで、田島が言う
今その手は離れない。



「でもさぁ、やっぱこれがいーよな」



温かなてのひらは俺の手に



「はないの隣。な」



笑って俺を見上げる
そうだよ
だって
追いかけるのも 追い付かれるのも
嫌だろう だって俺たち恋人なんだから
好きなものとは肩並べて



「そうだな。お前は俺の隣に居なきゃ」

「居るって!何だよ信頼ねーの」



笑ったのが癪だったらしい田島の髪をわしゃわしゃ掻き回して
向かうは俺ん家
今日の予定は買い物の後 部屋でゆっくり
日頃の空白分を埋めるべく。
繋いだ手は平行
お互い大好きなものじゃイーブンとはいかないけれど
その小さな手を握って歩く恋人の時くらいは、肩並べたっていいだろうから。



「あ、クレープ。」

「おまえまだ食うのかよ!」

「おぉ。オレでっかくなるんだもん。」

「…横にでっかくなっても知んねぇぞ…。」


家までの道
繋いだ手は平行のままで。






――― All Of Us Is Even
Even, And Even.




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