Category:浜田と泉
2013 7th Aug.
(猫)カラーパレット
【猫いずみシリーズ】
いずみはきれいな色だねえ、と浜田はいつも言ってくれる。そうして大きな手のひらで頭を撫でてくれるのが、いずみは嬉しくてうれしくて堪らない。
まっ黒ねこのいずみの色は、光を受けると強い青色に輝く。だからほんとうはまっ黒ねこではなくて、まっ青ねこなのだ。
今日は白くて大きい雲の上にお日さまが出ていて、いずみはすてきにきらきらする。
普段はお風呂の鏡くらいしか自分の姿は見えないけれど、今日は水にいずみの姿が映っている。それをまじまじ見て、なるほど自分は青いのだなあと思った。
浜田たちはなつやすみというやつらしく、しばらく学校がお休みらしい。だから浜田はいずみを連れて、梶山のうちへやって来た。
毎日まいにち暑いから、浜田はいずみに水遊びをさせてあげようというのだ。梶山のうちは広くて、ちょっとくらいうるさくしても大丈夫だから、結局梅原も呼んでいつもの面子が集まる。
梅原が持ってきてくれたビニールプールに水を張って、お気に入りのおもちゃとか、水でっぽうをそこに浮かべていずみは遊ぶ。
最近、雨が降らなくなってから、太陽が毎日出てきて暑い日が続いている。そんな中用意してもらったビニールプールはとても具合がよくて、いずみはすぐにすきになった。
胸くらいまでの水の中に座りおもちゃで遊んでいると、太陽の光が水にも射して、きらきら光っていずみの目をいじめる。
でも、きれいだ。好きなものときれいなものに囲まれてすてきだなあと、いずみが静かに遊ぶそばで、ずっと年がいっぱいの筈の三人組はぎゃんぎゃんと大きな声で遊んでいた。
「テメー浜田ああぁ!」
「いーじゃん服くらい梶に借りれば。」
「梶の服とかヤダ!なんかもうヒゲとかメガネとか付いてそう!」
「何でだよ付いてねえよ!」
「あははははブハッ」
「これでおまえも水が滴るいい男だなー浜田ァ!」
「…これ以上いい男になったら困るじゃーん?」
「………」
「………」
「ちょ、なんか言ってよ!かわいそうじゃんオレ!?」
「「いやおまえはかわいそうなヤツだよ。」」
プールに水を入れたホースで水の掛け合いっこをしている。
いつも思うけどばかだ。いずみと違って着替えなんかないのに、よくあんなにずぶ濡れではしゃげるものだ。
あんまり楽しそうに馬鹿をしているので、いずみはプールに浮かべた船を動かすのも忘れて彼らを見ていた。と、あることに気がつく。
太陽は梅原の上にも降り注いで、その髪を赤くしていた。黒いと思っていたのだが、いずみと一緒で光が入ると暗い赤になって輝くらしい。
きっとほんとうはそうなのだ。同じことは梶山にも起こり、浜田より濃い焦げた金の色は、たからものの光みたいに本当にきれいな金色をする。
じゃあ、浜田は?そう思って見回したが、浜田はどこにもいない。
だっていずみの後ろにいたのだ。
「もー濡れちゃったからいーや。」
「はまだ。」
「いずみ、水でっぽうであいつ撃っちゃれ!うりゃ!」
「うわ水でっぽう地味にいてえ!」
小さな子供用のプールに浜田が入ってきて、とっても狭くなってしまった。いずみは居場所がなくなって浜田の膝上に乗りながら、彼を見上げる。
浜田の色は、太陽の色をしていた。というのもちょうど彼の頭の上に太陽があって、色みの似ている金髪が強く光るそれを透かしていたからだった。
白い色が淡くなって、明るい浜田の金髪になる。いずみはその色が大好きだった。
浜田はいつもいずみの色を褒めてくれるけれど、いずみにしてみれば浜田の色が、世界でいちばんきれいな色だ。
きらきらする、まぶしい太陽のような色。
そう思うとあんまりきれいで見入ってしまった。
「ん?どした?いずみ。」
「……、せまい。」
「そーだぞ浜田!オメーみてーな巨体許容オーバーなんだよ!」
「ふっ、太ってるみたいにゆーな!」
じっと見ていたら浜田に気づかれてしまって、どうしたのと言葉が降る。
見とれていたなんて言えない。それも浜田はいつも優しく笑ってそう言うから、いずみは照れて、思っているのとぜんぜん違う事を言ってしまう。
でも、ほんとうにきれいだ。
濡れた浜田の髪から光が落ちるようで、伝った雫をちいさな手のひらに閉じ込めてみた。
―― Color Pallet.
boy picks up many color from everydays.
一年365題より
8/7「太陽の色」
梶さんちはでっかいおうちだと思って下さい。
いずみは青い黒ってイメージがあります。なのでほうぼうのSSでそう表現していますが、もしかしてちょっと茶けた黒だったでしょうか。
それぞれ浜田は明るい金色、三橋は形容しがたい色(超人ver.は薄い金色の瞳)、阿部は真っ黒、花井は灰色、田島は茶とか焦げ茶のイメージです。
ちなみに梅は暗い赤、梶さんは焦げ茶混じりの金。
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