365 | ナノ

Category:阿部と三橋
2013 8th Aug.

☆ 冷房と暖房のあいだ

【もふもふな高校生とふつうな高校生】



 本日も日本列島は暑い暑い。
 だので他の例に漏れず、三橋も冷房が効いた部屋の中にいた。
 ただし、冷房をつけたのは三橋ではなく、この部屋は自分の部屋ですらない。

 誰のか、というと、三橋が背もたれがわりにしている黒いもふもふの彼の部屋だ。
 彼はその名を阿部といい、三橋の高校の同級生だが、黒くて大きなもふもふになれるというすてきな特技があった。
 もふもふの彼は大きな猫のようで、とてもかわいいと思うのだが、いかんせん毛皮を着ているので夏には非常に弱いらしい。
 だから冷房の設定温度も世間様のそれよりもやはり低めにして、冷たい風を出している。

 以前そのせいで、同じようにして部屋にいた三橋はだいぶと体が冷えてしまった事がある。その経験を踏まえ、もふもふの彼と夏同じ部屋で過ごすときは、三橋と阿部でひとつずつ工夫をする事にした。
 まずは設定温度を少し上げ、その替わり阿部はそばに扇風機を置くようにした。これで常に冷たい風が来るようになり、快適なようで今はすやすやと眠っている。
 そして三橋はというと、ぬくいもふもふに寄りかかる事にしただけだ。正直背中が汗ばんだりもするが、寒いという事はもうないし、扇風機が首を振ってくれるので暑さはすぐ飛んでいく。

 ただ今日は、三橋の膝の上にもうひとりもふもふがいた。
 阿部よりもだいぶ小さいそのもふもふは、阿部の弟でシュンという。彼は三橋になついてくれているらしく、阿部の家へ行くと阿部そっちのけで遊んでくれとせがんでくれる。
 今日もさっきまで遊んでいたのだが、疲れてしまったのかシュンは三橋の膝を枕にやはりすやすやと寝息をたてている。

 背中に兄、膝に弟。阿部兄弟に挟まれながら、この部屋で最早起きているのは三橋だけだ。
 昼下がりの空気は気だるく、またふたつの健やかな寝息に挟まれては、瞼は重くなるばかり。
 膝の上のもふもふした頭を緩慢に撫でていた三橋は、ひとつ小さくあくびをした。
 三橋が眠ってしまったところで、誰か咎める者もいやしない。

 重い瞼を閉じてしまうとすぐに眠りが訪れた。
 夢を見るために少しずつ下がっている体温に、もふもふたちの柔らかな熱はちょうど気持ちのいいそれだった。 


―― Comfortable!

一年365題より
8/8「欠伸」
魔王でもふもふしてる阿部の現代版… ではなく、「もふもふ」というネタ自体が友人のものです。(トップページにリンクしてあります。)
これも魔王もちゃんと許可頂いてます。彼女は三橋をめぐる阿部兄弟の戦いが好きなので、このSS送ったら、三橋の膝をかけて水面下の争いがあったのだろうとにやにやしていました。


 
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