365 | ナノ

Category:花井と田島
2013 21st May.

○ モノポリゲェムの勝者は誰だ?

【高校生と高校生】


 花井の利き手は右手だ。
 球を放る時だって勉強の時だって、そんなのは注意して見ていればすぐわかることだ。

 そしてオレはそのことから、こう考えている。

 だあれも知らないことだけど、それはたまの二人っきりの帰り道。
 花井は右が定位置で、オレは何か話しかけるたんび、まばらに行き交う車の明かりを花井の向こうにして見てる。
 だから、オレのほうにあるのは左の手。
 車から守ってくれてるのも左の手で、そのことはおんなじ男としてちょっと恥ずかしいけど、嬉しいからときどき街灯の明かりの陰で手をつないでみたりするのだ。

 だあれも知らないことだけど。
 みんながみんな、花井は右利きだと思ってる。じゃあその大きな右手のひらの対の手はどうしてるのかって聞かれたら、そりゃオレのものなんだよって、誰にも知られたくないけど誰かに言いたくてたまらないから、唇に指たててちょっと笑って言うと思う。

 オレのためにしか使われないんだよってさ。
 だけどほんとのこと言うと、手をつないだ帰り道、また明日って言いながら、オレはキスしてってねだるんだ。
 花井はちょっと周りを見回したあと、暗がりでキスしてくれるんだけど、そのとき右手の指でオレの顎を上向かせて、親指で唇を軽くふにって触るんだ。
 別に目が悪いから位置の確認ってんじゃなくて、たぶんオレの唇に触るのがすきなんだと思うんだけど、キスしたあとその右手で髪を撫でてくれる。

 左手はオレのだって言ったけど、実は右手も半分くらいはオレのなのだ。
 ほんとは手とか言わずに花井のぜんぶをオレのにしちゃいたいけど、他にしなくちゃいけないことがあるから、今はしないでおく。

 あとは次のお楽しみってことで。
 だからしばらくは、独り占めするのはナイショの左手だけにしておく。


―― Bring it on this Monopoly game.
   but the winner is me!

一年365題より
5/21「利き手とは逆の手で」
お題のとおりにしようと思ったのですが、田島さまが片手で済むわけがなかった。



 
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