Category:花井と田島
2013 8th Jan.
○僕の数君の心
【高校生と高校生】
向かいに座る花井の目が文字を辿るのを田島はただ無心に見つめる。
答案上のマルをかき集めて記された二桁の数字が、この手で歪めたものだと彼は知るよしもない。
自分はわざと点数を落としている。それは田島が赤点をとらないようにと彼がくれる厚意と好意を、とどのつまり自分は裏切りまくっているのだ。
けれど。
自分と彼と、どちらがより悪いのだろう。
自分の気持ちに気がついているくせに知らないふりをする彼と。
そんな彼のせめて注意だけでも独り占めしたくて彼を裏切る自分と。
どちらがより悪いのだろう。
彼が抱きしめてさえくれれば、望むものなんだって与えられるのに!
「田島。おまえ最低限覚えられんなら、もーちょっと点数とってくれ。」
「花井ももっとがんばれよ。花井教えかたうまいから、もーちょっと付き合ってくれたらオレたぶんいい点数とれるよ。」
何を言っているんだと言外に訴える目は濃い灰色。
真正面で受け止めるとすぐ外れてしまうその視線は、田島が見ていないときはずっとこちらを見ているくせに、彼は頑なに口を閉じる。
この形の良い唇におまえが好きだと言わせてやりたい。
それが耳元で聞こえるまで、紙片の数字は歪み続ける。
ーー i can't wait anymore!
一年365題より
1/8「歪められた結果」
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