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2014 28th Feb.
【高校生と高校生】
花井が端末を替えた。
ぴかぴかの、花井が好きな白い色の、みんながよく持ってるてのひら端末。
替えるなんか言ってなかったのに。
そう言ったら、家族の誰かといっしょに替えると割引きになるからって、おばさんに昨日連れていかれたらしかった。
なら、花井の前の端末くれよ。
そう言ったら不思議そうな顔をしたけど、花井はいやじゃなきゃオレのお願いを断ったりしないのだ。
次の日持って来てくれた端末を手にして、オレはにっこりする。
「初期状態に戻したから。」
「んー。これって、このちっせぇカード入れ替えたらいんだよな?」
「確かそうだった気がする…。」
ぱち、とフタをはめて電源を入れると、花井の端末はオレの端末に生まれ変わった。
特に問題ない。さっきまでオレのだった前の端末をカバンの中に投げて、色々いじってみる。
花井の端末。落としたりぶつけてばっかりのオレと違って丁寧に使ってるから、ほとんど傷もなくきれいなもんだ。
何のプリントもない透明なケースに入ったそれを持って上機嫌のオレに、花井は何が嬉しいんだ、と使い古しのそれを言った。
「花井のだもん。」
「中古みたいなもんじゃん。」
「オレのコレよりぜんぜんキレイ。」
「おまえは不注意なの。……あんま雑に使うなよ?」
「ウン。」
花井の新しい端末は、オレが貰った前の端末の後継機になる。
使い方もほとんど同じだから選んだのだろう、見た目も色もそっくりの端末が嬉しくてみんなに見せびらかした。
「田島ケータイ替えた?」
「ウン、花井の貰った。花井機変したから」
「ふぅん? まあソレ一番使いやすいっつーしな。」
「そーそー。」
使いやすさとか、一番売れてるとか、前のモデルとか、どーでもいい。
でもオレはにこにこしている。だって花井のがオレのものになったんだもん。
今度からこの端末はオレのもの。
こうやってひとつずつひとつずつ、花井のものをオレのものに変えていって、それでいつか花井自身もオレのものになったらいいな。
これはほんの足掛かり。
オレが大好きな花井がオレのものになんなきゃヤなんだよ。
欲張りって花井はよく言うけど、そんなオレが好きなんだろ?
―― No end.
なにこれへたくそ。
機種変して要らなくなった相手の端末を自分のものにするってかわいい話のはずだったんですが、オチがなかったです。
スマホをスマホと呼ぶのかケータイというのかわかんなくて端末扱いしてみた次第です
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