crying in my sleep
※リヴァペト本『Your the reason』自体、ifな話ですが、それが兵長の夢だったら…的な小話です。





 式を挙げた後とは言え、行為自体、ともに過ごす夜自体初めてでもないのに恥じらう彼女にどうしようもなく愛しさが募り、やっとこれからずっと、何の気兼ねもなしにふたり一緒にいられる嬉しさと幸福に包まれて朝を迎えた筈だった。


 まず見えたのは、ここ一ヶ月ほどで見慣れた天井だった。右手を傍らの彼女に手を伸ばし…触れるのは冷えた上掛けだけだと気付いたのと、勢い良く身を起こしたのはほぼ同時だった。
 上掛けすら被らず、黒の上下に革靴すら履いたままで寝台に寝転がっていたらしいというのは分かった。
 いや、昨夜はペトラと一緒だったはずだ。だが、この部屋に自分以外の誰かがいた形跡すらない。そもそも、彼女が耳飾りを外し、編みあげていた髪を共に解いていた鏡台すら無い。ここは一ヶ月ほど前からの俺の部屋だ。式を挙げた後ふたり籠もって慈しみ愛し合ったあの部屋ではない。
 口の中が乾く。自分の鼓動がうるさい。
 思わず固く握りしめた左手の中に何かあると痛みで気付き、ゆっくりと開けば簡素ながらも銀色に光る大きさの違う指輪がふたつ。
 ああ、そうだった。
 壁外調査の前に作らせていたのを部下たちの家を回った後に引き取って、渡せなかった指輪を握りしめながら古城のこの部屋でひとりいつの間にか寝ていたのか。
 約束したわけではない。俺が勝手にしたことだ。彼女は怒るかもしれないが、それでも受け取ってくれるのではないかと。あれはそんな想いが見せた夢だったのか。

 ふたつの指輪をもう一度握りしめ、右手で顔を覆えば、指先が僅かに濡れたような気がした。



〔了〕



こんな結末な本にならなくて良かったと思いつつ、これもまたリヴァペトの形の一つかなとも。
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