心の声が聞こえるようになったら要の密かな企みを知ってしまった(ボツネタ)
2021/05/18 16:51

「おはようございます。今日もいい天気ですね」
――――《相変わらず細いな。ちゃんと食べているんだろうか?今日は天気もいいし、スイーツブッフェにでも誘ってみるか》

異変に気が付いたのは、登校して杉野要と会話をした時だった。

普通に挨拶をしたあと一拍遅れて頭の中でも要の声がして、最初は聞き間違いかと思ったが。

直後「割引券があるので如何ですか?男一人だと行きづらくて」と実際に誘われ、ある仮定が浮かんだ。

「えっと……せっかく誘って頂いたんですが、最近ちょっと太りぎみなので遠慮して置きます」

「……ではまたの機会で」
――――《いや、寧ろ痩せ過ぎだ。今度バターと生クリームをたっぷり使ったパウンドケーキを焼いて来よう。彼女の性格なら強引に押し付ければきっと断れない。最低でも後8Kgは太らせなければ》

「ひっ」

「どうかされましたか?」

「いえ、なんでもないですっ」

間違いない。
これは要の心の声だ。

そして、丁度脇を通り過ぎた男子生徒からも《お、今日は芳香ちゃん要くんと話してるな。俺のマイナー推しカプ最高》という意味はよくわからないが、明らかに廊下でするような独り言ではない声も聞こえて確信した。

どうやら自分は――他人の心の声が聞こえるようになってしまったようだ。

……何で急にこんな能力を身に付けてしまったのか、実は心当たりがあった。
今朝、溝に落ちた小さな狐を助けたのだ。実は妖怪の血族だったらしく人語でお礼を言われて「これはほんのお礼です。一日限りのささやかなものですがどうぞご活用ください」と前足の肉球をぺちりと額に押し当てられた。

その時はよく理解していなかったが、きっとこれこそが狐にとっての『お礼』なのだ。

心を読めるようにしてしまうなんて凄い能力だが、妖怪は未知の能力を持った生き物だ。これぐらいではもう驚かない。

一日限定だと言うのが本当なら、余計な心配をかけたくないので特別公務員や紅雄に報告する必要はないだろう。早退もしなくていい。

だが。

クールでそれほど口数が多い訳ではないあの要が、心の中では女子にとってかなり恐ろしい計画を立てている事実には思わず震えてしまった。

最近やけに要に食べ物を貢がれて3Kgも太って、やっと2Kg戻したところなのに……これ以上なんてとんでもない!

申し訳ないが暫く要に近付かないように心に誓い、少女は平静を装ってその場を離れた。

××××

これ以上は力尽きてボツにしました。この後恭太郎とも話す予定でした(察し)



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