口の中が切れた紅雄(ボツネタ)
2020/04/16 19:13

夢主=◯◯表記


紅雄には犬歯の代わりに鋭い牙が四本生えている。

会話している時たまにちらりと覗くことがある。
基本的に紅雄は喋る時も食べる時も必要以上に口を開かないのではっきり目にする機会は少ないが、外見的に人間と大差がない彼が吸血鬼だという証の一つだ。

先端は尖っているが刃物ほど切れ味のよくないあれを肌に突き刺して吸血するのだから、我ながらよく痛いのを我慢していると◯◯は思う。相手が紅雄じゃなかったらきっと我慢出来ない。

赫夜や朱央と比べると分かる通り牙にも個人差はあるが、おおむね鋭くて長い。

そんな物を常時口の中におさめている訳だが、たまに気を抜いてしまう時もあるのだろう。

「ぅっ」

と、突然紅雄から小さな呻き声が上がったのを◯◯は聞き逃さなかった。

「どうしたの?」

「あー……なんでもない」

「…………」

「……そ、そんな悲しそうな目で見るなよ。ちょっと歯が当たって口の中が切れただけだ。たいした傷じゃねぇからすぐ治る」

「手当て、」

「いや、大丈夫だって」

「でも……」

戸棚にある救急箱はほぼ◯◯専用と化している。たまに恭太郎も使用する事もあるが。

◯◯の知る限り、紅雄は軟膏も錠剤も一度も使った事がない。

でも、誰だって『痛い』のは『辛い』はずだ。

紅雄には辛い思いをして欲しくないが、◯◯がああしろこうしろと強要する行為も彼にとって苦痛かもしれないと考えると、強くは言えない。

どうするべきか。

と真剣に悩んでいる様子の◯◯に、先に折れたのは紅雄の方だった。

「分かったよ。今回は◯◯の言う通りにする」

「あ……ごめん、あの、」

「謝んな。お前の気持ち自体は素直に嬉しいし、」

照れ隠しにそっぽを向く紅雄に何だか◯◯まで照れてしまい、動揺を誤魔化すように救急箱を用意した。

中身を確認すると、◯◯専用の増血剤、包帯、絆創膏、頭痛薬――と色々あるが……口の中の出血はガーゼで押さえて止血したらいいと聞いた記憶がある。

「会長、ちょっとあーんしてみて」

「えっ」

「傷の具合、見たいから」

言いながら◯◯が近寄ると、紅雄は生徒会長専用の椅子に座ったまま仰け反り、明らかな“抵抗”を示した。

「く、口の中見るのか……」

医者以外に口内を晒すのは何となく恥ずかしいという紅雄の気持ちも分かるので、嫌なら無理強いはしないと伝えると暫しの沈黙の後「頼む」と、小さく紅雄は言った。

××××


盛り上がりも何もない。タイトル通りの話なボツネタです。その後の展開が思い付かず、本当につまらない話になってしまった……。勿体ないのでネタ帳に上げました……。



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