緋墨に媚薬を盛られる(ボツネタ)
2020/02/02 20:07

※R12(キスしてる)


力では絶対に敵わない。

相手は上背があってがっしりした男――それも、正体は人知の及ばぬ力を秘めた吸血鬼。

こんな風にソファーに組み敷かれ、倍は違うであろう体重で動きを封じられてしまえば、ただでさえ平均よりか弱い人間の少女では万が一にも勝ち目はない。

それでも諦めずどうにか抜け道を探る少女を余裕の笑みで見下ろしながら、吸血鬼・緋墨はスーツの懐から何かを取り出した。

小瓶だ。

緋墨が上体を起こした事によって手が自由になったのでここぞとばかりにもがくが、逞しい下肢だけで簡単に押さえ込まれてしまう。

「綺麗だろ?」

無駄な抵抗を嘲笑うように、緋墨は少女の目の前で小瓶を揺する。たぷたぷと波打つ中身は暗闇で光りそうなくらい明るいピンク色の液体で、まるで片栗粉の混じったような、もったりとした“とろみ”のある感じだった。

「これが何か分かるか?」

「っ……分かり、ません」

問いかけられ、つい律儀に応えてしまう。

「そりゃそうだ。俺の扱ってる『商品』の内の一つだからなァ……」

毒……あるいはそれに値する薬品かと警戒する少女を尻目に緋墨は小瓶の蓋を外し、己の口に傾けた。

呆気に取られる少女の反応に緋墨は笑みを崩すことなく、中身をいっきに呷(あお)り……そのまま少女に口づけた。

「ッ?!――――ンっ」

抜かりなく両手で頭を固定され、親指で口を割られる。
突然のことで歯を食い縛るのが間に合わず、合わさった唇からどろりとした甘い液体が流し込まれる。

味わった事のない味だが、絶対に体によくないものだ。

飲み込まず口の外へ吐き出そうとするが、口移しだけに飽き足らず執拗に口内を荒らす緋墨の分厚い舌に邪魔をされ、押し返そうとする少女の舌は逆に絡められてしまった。

足をばたつかせ、覆い被さる緋墨の肩や背中を必死に叩いても手が痛いだけで何の意味もない。

緋墨の舌は分厚い上に長い。その気になれば喉の最奥にまで届くだろう。

粘膜をなぶり、窒息しそうなくらい唾液も送り込まれ、液体と一緒にヌチャヌチャとかき混ぜられる。そこに緋墨の香水の匂いも合わさって頭がくらくらした。

酸欠で視界が回る。

それでも頑なに嚥下を拒んだが、限界は唐突に訪れた。

ごくり。

「よォし、いい子だ。意外と美味いだろ?」

一度喉に通してしまえば、後は道が開いたように次々と流れ込むのみだ。

全て飲み込んだのを確認して口を離した緋墨に、満足げに頭を撫でられる。抵抗する気力はなかった。

異変はすぐに起きた。

内側から熱が沸き、体の末端まで侵食していく。

「ぁ……な、にぃ……これ……っ」

「素直になれるお薬だよ。嗚呼、依存性はないから安心しな。それにしても、即効性とは言えお嬢チャンは体が小せェからか回るのが早ェな。ゾクゾクしてもどかしいだろ?今、楽にしてやるよ」

「ゃッ、め、」

「ハっ……口では拒絶しても、人間は弱くて可愛いなァ」

額やこめかみに啄むようなキスをされただけで、全身を羽の先で撫で回されるような感覚に襲われる。

五感が普段の数倍に研ぎ澄まされ、何もされていなくても衣服や空気に皮膚が触れるだけで息が弾み、指一本自発的に動かすのさえ敵わない。

やっぱりとんでもない薬だった。

「俺も吸血鬼だからなァ」

ビクビクと震える細い腰を撫でながら、わざと息を吹き掛けるように耳元で語りかけられる。

「犯(や)りながら芳香の血を味わってみるのも、やぶさかじゃねェだろ」

言いながら、首筋に軽く歯を立てられた。吸血鬼特有の鋭い牙が食い込む感触が酷く下腹部に響く。

脳裏に紅雄の顔が浮かぶ。

吸血行為を許していたのは紅雄だけだ。

それが今、緋墨によって踏みにじられようとしている。

「お前から泣いて俺を欲しがるようにしっかり躾けてやるから、覚悟しとけよ」

××××


ボツ理由
→本当は本編でこういう展開にするつもりだったんですが、なんか違うなって思ってボツになりました。

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