その日は偶々だった。
学校帰りに彼女を見かけた。河川敷の川沿いに小さく膝を折り座っているだけ、何をしているのかは分からない。じめじめした小雨が降り続いていた、天気で私は朝から気分良くない。

前に押し倒した日の後も何もなく私にいつもの一言を用がある度に声に出してはの繰り返しで何も変わってはいない
益々彼女が分からない、やはり人形なのかと思い込んでしまうだけだった。


「れい、何をしている?」

『………ガゼル様。』


しかし、気になって声をかける。自分の行動までも訳が分からなくなる。 彼女はまた私に無表情のまま振り向き、立った途端子猫を抱いていたのが目に見える捨てられて間もない子猫だろう、白い毛にまだ汚れが少ない。

子猫に雨が当たらない様にしていたのか、小さい彼女の傘から
服の左肩は濡れている
今日は私の目を真っ直ぐ見ずに俯いた彼女。言いたい事はすぐに分かった


「子猫、貸して」

『…………貸して何をするんですか』

「良いから」


彼女はやはり私を警戒した
余程その子猫が気に入っているのか、離さない。彼女がここまで粘る姿は初めてで、どうやら私に渡す気は無いらしい。仕方なく、私は自分の傘に彼女を入れる。


「肩、濡れてるから」


彼女の初めて自分がさせた気持ちの表情は驚いていた。濡れているから彼女の代わりに子猫を抱えようとしたんだけれども、彼女が離さないから、やり方を変えたのがそんなに可笑しいだろうか。
一瞬そう自分で思い込んだがすぐに消えた彼女は優しく微笑んでくれていたから。グランの時とは違うけれど自分はこの表情の方が好きだから良い。


『猫、連れていっていいですか?』


儚げに、彼女は前の様に真っ直ぐ隣で私に聞いたそれに頷くと彼女はまた、さっきのように微笑んだ。グランやバーンが何を言おうと知ったことはない。彼女には、もっと沢山表情を私の目に映して欲しい

今度は、肩を並べて2人で家に向かった



(彼女の、真心。)











真心





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