「鱚味っ」
『いやだぁああい!もう来ないでぇえええ』
「相変わらずツンツンだねっ」
『一之瀬がデレデレなのよ!』
ライオコット島で一之瀬一哉を久しぶりに見た私はフルスピードで逃げた、ああ今度風丸に疾風ダッシュ教えてもらおう、うんそうしよう、それが吉だ。
だが流石アメリカ代表、サッカー少年。ぎゅーっと捕まえられてから首筋に吸い付けられて赤い跡が残った、キスマークだ。ごしごしと拭うが無駄だ、そうすぐには消えないものだから。
捕まったらもう成すが儘だ、抵抗したって所詮女の力で勝てるわけないって学習してる、だからもう出来るだけ目を合わせないように心掛けるだけ。
「ねーねー」
『何ですか』
「……寂しかった」
驚いた、彼がダイレクトに感情表現を言葉にするから。いつもはふざけて軽いノリで私に伝えるのに、余程な事でもあったに決まってる。ぎゅうぅうと一之瀬の腕の力が更に増した、私もぎゅっと一之瀬を抱き締めた。
『そっか』
「鱚味は?」
『死ぬ、かと思った』
「ははは、実は俺も」
彼は笑う、その笑みは無理矢理にしか私の目には映らなかった、今までずっと見ていた彼だから、分かる。彼は今、辛くて辛くて仕方がないんだと思う。聞いてあげたい、けれど、聞いたら私まで辛くて辛くて、彼を支えれないかもしれない。だから、自信がないから、聞かない。彼が言うまで聞かない。
抱き締めてる一之瀬の腕の力が弱ったり、強くなったり、ああ迷ってるんだね。
「…ねぇ、鱚味」
『何?』
「俺、鱚味と離れるの辛かった」
『…今、会えたから良いじゃない』
「ずっと、会えなくなったら?」
視線が合った、反らせばいいんだけれど反らせない。捕らえられた虫みたいに。
ずっと、とは永遠の事だろうか。永遠なんてないって信じてる人間関係だって、物事だって、いつかは終わるって。それか、終わった永遠はそのまま残って行くと信じた人間がいるから永遠、だなんてあるんだろうか。
『じゃあ、私はずっと着いて行けるようになる』
「別れと、なっても?
鱚味は着いて来てくれる?」
『…一之瀬なら、いいよ』
私が笑う、彼も笑った。
どうか君と私に永遠があるように願いましょうか、と真夏の青い空の下誓いの口付けをしておこう。
***
一之瀬きゅんのマンネリ化
彼は変人だがとても素敵だって
何度改めて思ったことか