「あれ、あそこにいるの……」
いつも通りにオルフェウスのみんなで練習してるとマルコが1人の女の子を指差して言った、……確かに彼女だ。
彼女はキョロキョロと辺りを見回して俺達に気付くと小走りで向かって来る、そして俺の真正面に立ち真剣な目で俺の手を握った、どきんと鼓動が大きく弾む。
『フィディオ・アルデナ。』
「う…うん?」
『お願いがあるの』
それは好きな子に真剣な目つきでおまけに手まで握られてお願いがあるの、だなんてドキドキが止まらない。後ろでマルコがクククと喉を鳴らして笑っている、笑うな。
『オーディンソード教えて』
きりっと動作音が鳴ったかのように彼女は真顔で言ったのだ、思考が止まる、時間が流れる
「…うん、なんで?」
俺が問うと彼女は少し目線を下に向けて人差し指をくっつけ、もごもごと唇を動かす
『痴漢防止……』
「え、痴漢に合うの?」
『うん…最近、だからオーディンソードってフィディオの見てるとすごく強そうだもん』
だからオーディンソードか。……まれに彼女は変な考えをするなぁ。
「僕が守ってあげようか?」
隣のアンジェロがにこりと言った、それ俺の台詞。
『アンジェロが逆に合いそうだからいいや、それに自分の身は自分で守らなきゃ』
いや、彼女の考えは合ってるんだけど、間違ってないんだけれども、まぁ如何にも彼女らしいんだけど。
「良いけど、そんなに簡単じゃないし…その格好だと……」
今の彼女の格好は上は淡い青色のキャミソールに下は真っ白なプリーツスカート。とてもサッカーを練習出来るような格好じゃない。
『ちゃんとスパッツはいてきたよ』
ちらり、黒くて丁度良い細さの太ももにぴっちりとくっついたスパッツ。俺達オルフェウスが使用してるのと同じぐらいで…いや、そういう問題じゃなくて。
考えているとジャンルカが思い出したように口を開いて、
「予備のユニフォーム合ったよな、それ使えばいいんじゃないか?」
『…じゃあお言葉に甘えて』
にっこりと改めて俺の手をぎゅっと握ってよろしくね、と彼女は首を横に傾げた。
ああもうどうにでもなれ
ねぇ俺を頼ってよ***
続きます。