※年は大学生くらい
※思いっきりねつ造
※円夏前提
※夏未さん出ない


「付き合うことになったんだ」

 その言葉を聞いて、豪炎寺は頭を打たれた気分だった。自分の知らぬ間に、円堂と夏未はお互いの思いを伝え、深めていたのだ。自分だってそれなりに彼女と連絡はとっていた。それでも夏未が好きなのは円堂なのだと本心を隠していたせいで、結局彼の思いが届くことはなかった。それを知ったのは、北風の吹く寒い冬の日。

「お前、それでいいのか?」

 風丸は、豪炎寺の気持ちに気付いていた少ない人物でもあった。豪炎寺がひた隠しにしてきた思いを無碍にするような言葉ではあったが、言わなければいけないと思った。彼は他人の為に自分を犠牲にしてしまう。このままだったら、彼がもっと大きなものを犠牲にする道を選ぶんじゃないか?そんな不安がよぎったから。

「……いいんだ」
「いいって、それじゃお前が」
「幸せそうだったよ」

 柔らかい笑みを浮かべて豪炎寺は言った。そんな顔をされると、風丸は何も言えなくなってしまう。豪炎寺は、自分が辛くとも構わないらしい。自分のことは二の次、彼らしいといえば彼らしいが、風丸はどうにも納得がいかない。

「二人が幸せなら、俺はそれでいい」

 そんなのは綺麗事だろ。口から出掛かったそれを飲み込んだ。これ以上口を挟んでも、彼がそう簡単に自分のしたことを曲げるとは思えない。彼は誰よりも頑固だ。
 風丸と別れて、豪炎寺は一人になった。風が心すら凍らすようで、妙に物悲しくなる。

「……」

 吐いた息が白くなって消える。自分の思いは、こんな簡単に消えはしない。自分の心の中に、わだかまりになってずっと遺るのだろう。その気持ちとずっと向き合わなければいけない、そう考えると、長い間隠したそれが溢れる前に少しだけこぼしてしまいたくなった。そうだ、今別れを告げてしまえばいい。
 さようなら、自分の思い。どうか彼女に伝わることがありませんように。

「……好きだったよ、夏未」

 吐いた息が、じんわりと消えていった。

20120107

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