「もしもだけどな、」

 出した声が、少しだけ震えた。自分でもだいぶメンタルが弱いと思う。けれど、やっぱりこんな事を言い出すのは怖い。

 俺と音無が付き合ってしばらく経った。告白した時、音無は笑顔で私も好きだと言ってくれた。その時はだただ嬉しくて、音無を抱きしめた。付き合っている事が知られた時は、鬼道はかなりショックを受けて固まっていて、豪炎寺はよかったじゃないか、と言ってくれた。円堂だけは、いまいちよく分かっていなかったっけ。
 あの頃は一緒に居るだけで幸せで。帰り道に手を繋いだり、休日にデートをしたり、そんなひとつひとつのことが幸せの種だった。だけど、人というものは傲慢で欲深い。俺の場合は、我が儘というより嫉妬の方向だ。他の男子と楽しそうに話す姿を見ると無性にイライラする。いや、音無が男子と一緒にいるだけでもイライラする。
 最近はその気持ちがエスカレートして、俺が一方的に思ってるだけで音無は俺のことを好きだと思ってないんじゃないかと思うようになってきた。自分でも何を考えてるんだとは思った。ただ、一度出てきた不安はそう簡単には消えてくれない。それどころか日に日に大きくなっていくようで。
 なあ音無、お前は俺のこと本当に好きなのか?俺の気持ちって一方的なのか?なあ、音無。お前は、俺のことちゃんと好きでいてくれてるのか?

「もし俺が、お前の彼氏辞めるっていったらどうする?」

 突然風丸さんに大事な話がある、って呼び出されて来たらこんな事を言われた。突然の事に何を言えばいいのか分からなくなって頭の中で言葉が渦巻いた。
 落ち着け、私。風丸さんが急にこんな事を言い出すってことは、何か訳があるに違いない。この人が考えなしに行動するなんて基本的には無いんだから。風丸さんは風丸さんなりに考えてるはず。きっとそうだ、絶対にそうだ。
 だとしたらどうしてこんな事を言ったんだろう。例えば私のことを嫌いになったとか。自惚れと思われそうだけど多分それは無いはず。そうだとしたら、嘘を付けないこの人のことだ、もっと素っ気なくなるはずだもの。じゃあ他の理由は何だろう?……これも自惚れだと思われそうだけど、もしかしたら風丸さんは不安に思ってるのかもしれない。最近委員会の仕事が忙しくて、連絡はとっていても学校で風丸さんと話す機会が減ってきてるし、同じ委員会の男子達ともよく話すようになったし……。もし原因がそうだとしたら嬉しい反面、罪悪感もある。だってそうじゃない、私のせいで風丸さんがこんなに悩んでしまったんだから。私って人の気持ちに疎いのかな。一緒にいれば相手の気持ち、少しは分かりそうじゃない?円堂さんに鈍感だなんて言ったことあるけど私も人のこと言えないなぁ。あ、でも大丈夫ですよ、風丸さん。だって私はあなたのことをずっとずっと、

「愛してる」

不安になんてならなくていいんですよ。今の言葉に嘘は無いんですから。私が笑うと、苦笑いだけど風丸さんも笑顔になってくれた。

「あぁ、冗談だから安心しろ」
「そのままそっくりお返ししましょうか?」


20111229

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