桜日和。
side:you
「「「お花見しようよ、マスター」」」
始まりはやっぱり年少三人の言葉だった。
「あー…お花見?」
「そう!!近くの公園すっごい綺麗なんだよ!!ね、レン」
「あぁ。さっきおつかいの帰りにみたもんな」
「カイト兄が場所取りしてくれるよ!!」
「え、俺??」
「酒があるならいいわね」
「お弁当作らなきゃですわね」
とうとう年長組も巻き込んでわいのわいのしている。
「あー…いや、あたし明日学校」
「「「え」」」
ピタリ、と全員の動きが止まる。
「すっごい面倒くさいのだけど、入学式なの」
「えー!!…パパさんとママさんも行けないっていってたし…」
「めーちゃんとカイトがいるんだし6人で行っておいでよ」
「えー…」
リンとレンはやっぱり駄々をこねたけど、行けないものは行けないのだからとなんとか宥める。
…私だって本当は行きたかったんだよ。
side:miku
綺麗な桜のしたにシートを敷いてみんなでお花見。
リンとレンは降ってくる桜の花びらを空中キャッチしようと頑張ってるし、メイコ姉はお酒飲んでるし、カイト兄はメイコ姉の膝枕で寝てるし、ルカ姉は数えきれない量のお団子食べてるし…桜見てる人なんて実質いないようなものなんだけど。
「あーぁ、やっぱりマスターもこれればよかったのに」
「しょうがないわよ。マスターにだって予定があるわ」
「だって…こんなに綺麗なのにみられないなんてもったいないよ!!」
ミクがはぁ…とため息をついたら後ろから声がした。
「そうだね、これは確かにもったいないかも」
「「「マスター!!」」」
嬉しさで思わず声が大きくなる。
するとマスターは困ったようにしーっと人差し指を立てた。
「カイトが起きちゃう」
「え、だって、マスター学校は…??」
「すぐ終わったよ。入学式だもん」
「そっかー」
マスターは靴を脱いでシートにあがると、「お疲れ様、カイト」っていいながらカイト兄の海色の髪をふわふわとなでてる。
「それにしてもー…」
マスターはメイコ姉をじーっとみてる。
「いいな、めーちゃん」
「なに?カイトの膝枕したいの??」
「めーちゃんに膝枕されたい」
「そっちですのね」
リンとレンを見てたルカ姉がマスターの言葉をきいてつっこむ。
「はいはい、そうね。…ひかる、私足疲れちゃった。代わって頂戴」
「えー…いいけど」
そんなこといいつつマスターは嬉しそう。
マスターと一番付き合いが長いのはメイコ姉だからきっと、さっきのが照れ隠しなんだってすぐにわかったんだ。
…本当にメイコ姉にもしてもらいたいのかも知れないけど。
「(…ミクお邪魔かも。)」
そう思って、ミクはリンとレンに混ぜてもらうことにした。
side:kaito
あ、誰かが頭撫でてる。
…気持ちいい。
「…誰…?」
寝起き独特のかすれた声が自分の口から出る。
「…だーれだ」
「………めーちゃん」
だったよなぁ、寝たときは。
駄目だ、頭がまだ寝てる。
この声はー………。
「……。」
「…めーちゃん??」
「……残念、カイトはめーちゃんのがよかったか」
そんな残念そうな声が聞こえて頭を撫でていた手が引っ込みそうになったときにやっと頭が覚醒してその手をつかんだ。
「…マスター…」
「おしいっ」
「…え?」
「なまえ」
「…ひかる」
「よくできました」
「…いつ来たの?」
「んー、さっき」
答えになっていない。
俺が少し顔をしかめたのがわかったのかひかるが苦笑する。
「昼前くらいだよ。2時間くらいまえかな?」
「…めーちゃんは…?」
「ルカちゃんの膝枕で寝てる。…でも、カイト全然起きなかったね。そんな疲れた??」
「朝早くから場所とりしてたから」
「お疲れ様。この公園こんなに人が来るなんて私知らなかったよ」
「この時期まで咲いてるのは珍しいから…」
「そかそか」
ひかるは楽しそうに桜を見上げると、くぁ…と小さなあくびを1つした。
そのあとすぐにへぷちっとくしゃみをする。
「誰か噂してんな」
「コンボ技。器用だね」
「なんでだろう、よく言われる」
俺はひかるに膝枕されたまま、ひかるのほっぺに手を伸ばす。
「…眠い??ほっぺ赤くなってる」
ひかるは眠たくなるとほっぺが赤くなる。
わかりやすくて好きなところの一つ。
「お天気いいからね。ぽかぽか陽気でいい感じに眠いよ」
「今度は俺が膝枕しようか」
そう提案すると嬉しそうな顔をしたものの、すぐに照れたような困ったような顔になる。
「なに??」
「え?」
「何か言いたげだから」
「あー…いや、うん。…その…、腕枕がいいかな、なんて」
そしたら一緒に寝られるし!!とか笑ってるあたり、本当かわいい。
「いいよ、かわいいマイマスター」
そういってまた寝転がって横に腕を伸ばすと、今度こそ嬉しそうに寝転がって、俺の腕に頭をのせる。
俺はその小さな体を引き寄せ抱き締めた。
「暖かい日射しの中、きれいな桜は満開で、なによりカイトがそばにいる。…素敵ね」
そういって笑うとひかるはすぐに小さな寝息をたて始めた。
するとルカが『バカっぷるですわね』なんていうから『うるさいよ、ルカ』と返したら、肩をすくめて笑ってた。
俺はもう一度ひかるをしっかりと腕の中に閉じ込めて目を閉じる。
あぁ、幸せってこういうこと。
今度はさっきよりも気持ちよく眠りにつけそうだ。
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