05
「幸福!」
平日だというのに人の多い駅前。
右手を小さく上げて俺の名前を呼ぶ高校からの親友の千秋。
「やっぱり来た」
高校の頃から変わらない笑顔を向けてくる千秋に近寄って肩を軽く殴ってやる。
眉根を寄せて顔を歪めながらも千秋は楽しそうに笑う。
「やっぱりって…お前が無理矢理っ」
「ごめんごめん!」
文句を言ってやろうとしたのに、先に謝られてしまえばそれ以上責めることも出来ずに唇を尖らせる。
そんな俺の姿を見兼ねたのか、子供をあやすように頭をポンポンと撫でられた。
「…で?どこ行くの?」
未だふて腐れながらぶっきらぼうに聞く。
先に歩く千秋はニヤリと不敵に笑った。
「言ったろ?久しぶりに飯行こう、って」
「…うん」
もう食いに行く場所が決まっているのか、スタスタと歩く千秋の後を付いて行く。
千秋と会うのは久しぶりで、他愛もない話で盛り上がった。
「おにーさん」
「え?」
聞き覚えのある声が背後から聞こえて思わず振り返る。
「あ。昨日の…」
こんな偶然ってあるのか。
昨日、公園で意味不明なことを言ってきやがった奴が目の前にいる。
相変わらず、何を考えているのやら…ヘラヘラと笑っていた。
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