03
「英チャンが、木村…一人で運ぶのは、無理だろうって」
説明の途中だというのに、段々と語尾が小さくなっていく。
最後は、辛うじて聞きとれた。
「そっか。ありがとう」
「別に」
折角お礼を言ったのに、相楽は無愛想にプイッと顔をすぐ背けた。
そして半分くらいプリントを持つと、スタスタと先に職員室を出て教室へと向かう廊下を進む。
俺も同じくらいの速度で相楽の後ろを歩いた。
後ろから見ると、意外に背でかいな。
もっと小さいと思ってたけど、俺と同じくらいかな?
うわっ…あんなにピアス開けて痛くないのかな。
「あのさっ」
ジッと相楽のことを観察していたら、急にクルリと振り向いた。
ビックリして思わず俺も立ち止まる。
「何?」
「後ろじゃなくて、隣っ…歩いてくんね?」
「あぁ」
何かと思えばそんなことか。
スタスタと先に行くから、てっきり俺の近くにはいたくないのかと思ってた。
相楽の隣を歩くのはいいけど、隣にきたからといって特に会話はない。
でも、心なしかさっきより歩くのがゆっくりになった気がする。
無言のまま歩いていたら、相楽の方が沈黙を破った。
「木村、さ」
「うん?」
「俺のこと嫌いだろ?」
「え?」
なんでバレたんだろう?
絶対に顔にも態度にも表してないのに。
間が開くと、それ以上何も言えなくなってしまった。
相楽は、苦笑いをしながら謝ってくる。
「ごめん。そんな焦んなよ。別に、嫌われるのだって慣れてるし」
「いや…嫌いじゃないよ」
「ありがとう」
「………慣れてるって?」