頑張れ御幸君1

「あ、倉持が食べてるやつ美味しそう。ちょうだい。」


私はそう言って、倉持の食べているおかずを横から取ろうとする。


「は?おい、ざけんなやめろ!」


すると倉持はそう言ってお皿を私から遠ざける。なんで、ちょっとくらいいいじゃん、なんて倉持に寄ると、私の正面に座る御幸君が


「美加ちゃん、そんなに食べたいなら、俺の倉持と一緒だし、食べる?」


とお皿を私に寄せてくれる。御幸君は、この間からいきなり私の事を名前で呼ぶようになった。最初はびっくりしたけど、御幸君があまりにも普通に呼んでくるから、私も気にしない事にした。


「いいよ、御幸君は練習あるしいっぱい食べなくちゃ!」


「はぁ!?俺だって練習あるっての!」


「倉持は走るんだから体軽くしなきゃ。」


私はそう言って、倉持のお皿からおかずを取る。食堂の卵焼きはお母さんの味がして美味しい。


「やっぱり美味しい。」


と言う私に、てめぇ、と倉持は私のおかずを取る。ちょっと、と怒ると、仕返し、と悪い笑い方をされた。


「馬鹿倉持。」「アホ美加。」


そんな日常。こんな私達を見る度に明日美ちゃんは、


「2人は本当に仲良しだねー。」


と笑う。仲良くない、とハモる私達に、苦笑いする御幸君。それがいつもの日常。



だけど、今日はいつもと違った。




ガタン、といきなり席を立つ御幸君。


「御幸君?」


と声をかけると、俺先に戻ってる、とそのまま食堂を出て行ってしまった。


頭にハテナマークを浮かべる私に対して2人は何だか面倒臭そうな顔をしていた。


「御幸心狭い!」


「御幸のやきもち…キモ。」


心狭い?やきもち?と聞いても2人は何も答えてくれないので、とりあえずご飯を食べ終えて3人で教室へ戻った。


途中、倉持はクラスが違うので別れたが、その時、部活までに御幸の機嫌なおしとけよ、なんて言われた。


教室に着き扉を開くと、御幸君は自分の席に座っていて、そして女の子2、3人と話していた。なんだか懐かしい光景だ。私は御幸君を見ながら扉を閉めた。


御幸君、御幸君と群がる女の子と笑いながら話している御幸君。


「御幸君、楽しそうだね。」


そう呟くと、明日美ちゃんは顔を歪め、アンタそれ本気で言ってるの?なんて聞いてくる。楽しそうに見える…。もしかしたら、今までたくさんの女の子に囲まれていたせいか、いきなり関わるのが私と明日美ちゃんに減ってずっとイライラしてたとか…!


そう考えたらすごく申し訳なくなって、御幸君とはこのまま関わらない方がいいのかもしれないと思った。やはり、御幸君は中身はアレだけどイケメンだから、目の保養にしておくのが1番なのかもしれない。


そんなふうに考えていたら、閉めた扉が開き、そこからひょこっと栄純が出て来た。教室を見渡して誰かを探しているようだ。


「栄純、どした?」


明日美ちゃんがそう声をかけると、栄純はこちらを見て、お姉さんに青山先輩、こんにちは!と大きな声で挨拶をした。その声量に教室にいるほとんどの人がこちらを見た。


栄純声大きいよ、と慌てる私に、明日美ちゃんは元気でよろしい!なんて笑っている。


「今日はどうしたの?」
「御幸に用があって。」
「こーら、一応先輩だろーが。」明日美ちゃんはそう栄純に注意して、席を立とうとしたが座って、


「美加、御幸呼んできて。」


と私にウインクした。


もし私が御幸を呼びに行ったら、その間美加は栄純と話せる。でも御幸を呼びに行った方が栄純の好感度アップだよ!と、明日美ちゃんのウインクが私に語りかける。気がした。


「わかったよ!」


私が元気よく返事をすると、明日美ちゃんは吹き出していた。






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