>> 作戦実行
おかしいな。いつもは改札口で会うのに今日はあの子がいない。寝坊?
そんなことを考えつつ、特に重くは受け取らずにいつもの道を一人で歩いた。ただ、どこか物足りないのは、しゃべり相手がいないからか、それとも・・・
―――――――――
予鈴が鳴った。
本来私がするはずの伸びを何故か先生がしている。今朝からティキ先生の数学特講が始まった。朝のHRまであと5分。私は筆記具をしまい、先生を見ると、先生は少し笑って言った。
「ちゃんと実行しろよ?」
「うぅ・・・はい」
先生は今日から先輩と喋るな、なんて言うのだ。私はただ先輩といっしょにいたいだけなのに。だけど、先輩には好きな人がいる。先生はそれを知った上でそう言ったのだ。
「先生、」
「んあ?」
「先生はなんで・・・」
「・・・?」
言葉につまった。上手い言葉を探していた。でも、生憎時間はない。
「本鈴鳴んぞ?葵ちゃん」
そう言って、私の頭にポンと手を起き数学準備室を出て行った。
―――――――
こんな時に限って職員室に用があるんだ。職員室に行くにはあの渡り廊下を通らなければいけない。先輩に会ってしまうかもしれない。
―もし先輩を見たら、私はきっと駆け寄ってしまうから
曲がり角を覗いて渡り廊下を見渡すと先輩はいない。少しホッとして小走りで渡り廊下を駆けた。
「ありがとうね」
集めた化学のプリントをコムイ先生に提出したら、コムイ先生はコーヒーを片手にニコリと微笑んだ。私も笑って失礼しましたとお辞儀をし、出口に向かって歩き始めた。そして引き戸に手をかけたその時、
引き戸はひとりでに開いた。
覚えのある匂い、失礼しますと言った、その少し高めな声に
「あ、葵ちゃん」
よりによって今。
喉が引きつって何も言えなかった。
作戦実行
20111216
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