>> 例外中の例外

「あれ、今日はロードいないんさ?」

俺がそう聞くと、葵ちゃんがこっくり頷いた。
「今日はロードお休みで。その・・・私まだロード以外あんまり友達つくってなくて。だから」
もじもじと恥ずかしげに話す葵ちゃんを見て、勘が働いた。

つまり、葵ちゃんは


「ここに来たら、先輩・・・いるかなと思って」
葵ちゃんもずいぶん積極的になったもんだ。俺は今はご飯を取りに行っていて、この場にいないアイツを少し羨ましく思った。



「あれ、葵ちゃん?」
大量のご飯を運び終わったアレンが食器の隙間から覗き込んだ。目ぇ輝いてんぞ。

「せ、先輩。ご飯ご一緒してもいいですか?」
「構いませんけど・・・ロードは?」
アレンが注意深く辺りを見回した。

「今日はお休みです」
「そうなんですか、それは残念ですね」
俺には全然残念そうに聞こえねえけどな。今回は完全に俺がお邪魔虫って感じさね。

しょうがないから今回だけは二人にしてやろうと自分のパスタに手をつけた。



「うぁっ」

葵ちゃんの気の抜けた声が聞こえたのはそれから数分後。葵ちゃんの視線の先は、倒れたコップ、そのまた先のアレンのジャケット。葵ちゃんのこぼしたコーヒーがアレンのジャケットにかかったらしい。葵ちゃんの顔はみるみるうちに青くなり、数秒間固まっていた。そしてはっとして言った。

「すすすいませんっ」
「あはは、いいよ。気にしないで」
アレンもある意味で慣れているため(ほら、コイツよく女子に水こぼされたりしてるからさ)、特に驚きもせず笑った。

「ジャケット・・・」
しかし葵ちゃんは相当気にしているらしく、少し涙ぐんでいる。

「えぇ!?葵ちゃん?」
これにはさすがにアレンも動揺して彼女に駆け寄った。

「気にしないで、ね?」
そう言って葵ちゃんの頭に手を乗せると、葵ちゃんの顔は青から赤に変わった。そして小さく頷いた。


とは言いつつ、やっぱり気になるらしく葵ちゃんはジャケットの洗濯を申し出た。



「っくしょい」
教室に戻る途中でアレンがくしゃみをした。
「大丈夫さ?」

「災難でしたね」
鼻をすするアレンはどこか嬉しそうに、笑った。


例外中の例外
あの子は特別らしい


―――――――

短編で書いた檸檬愛玉が結構後で効いてきてます。



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