>> ライバル登場

ああ、きっと今日は実質的に俺の向かいに座るロードとか言う子と昼飯を食うことになるんだと俺は悟っていた。

しかし今、俺は驚くことに葵ちゃんと昼飯を食っている。そしてもっと驚くことに、今俺の席の向かいは葵ちゃんだ。え、席替え?合コン?


「ねえ、アレン〜僕のハンバーグ食べるぅ?」
「あ、いえ・・・」

葵ちゃんは隣から聞こえる会話が気になる様子。ま、当然のことさね。「気になるんさ?」と俺が声をかければ、葵ちゃんは「何がですか?」と眉を下げて笑った。発言と表情がちぐはぐなのが、いじらしい。

これは、葵ちゃんにライバルの出現さ。

アレンはというものの、アレンの性格上(ていうか方針上?)近付いてくる女の子に冷たくはできない。しかも葵ちゃんの友達なら尚更のこと。拒ますに笑顔で対応している。

でもさっきまでの顔の筋肉の緩みっぷりは、そこにはなかった。


「葵ちゃーん」
俺が呼んでも、葵ちゃんは気付かずに、隣の席をぼーっと眺めている。
「葵ちゃーん!」
「うぁ、はい!」
我にかえった葵ちゃんがビクッと小さく痙攣して俺の方を向いた。

俺は葵ちゃんを楽しませようと、渾身のギャグやおもしろ話をくりだし、注意を逸らそうとした。


「あ、そういえば俺葵ちゃんのアドレス知らないさ」
教えてくんね?と俺がポケットから携帯を取り出すと、葵ちゃんも携帯を取り出した。承諾のサインだろう。

赤外線を送っている間、ロードがちらっとこちらを見て、思いついたようにアレンに言った。


「ね、アレーン!僕たちもアドレス交換しよぉ?」
「あ、はい・・・」
なすがままのアレン。

それを複雑な表情で見る葵ちゃん。元気付けなければ!
「葵ちゃんはもうアレンのアドレス知ってんだろ?」
「いえ・・・」

まさかの墓穴!

ていうかアレンはアドレス聞かずに何やってんさ!女の子に会ったらその日のうちにアドレス聞くのが常識だろうが!


「あ、予鈴だぁ」
赤外線を交換し終わって満席そうなロードは席を立って、アレンのそばまにかけよった。そして耳打ちして、「また遊ぼうね♪」と笑って、葵ちゃんを連れて食堂を出て行った。

俺は偶然にもその耳打ちの内容を聞いてしまった。


「葵のこと好きみたいだけどぉ、僕から葵を取らないでねぇ?」


アレンは目を丸くして、立ち尽くしていた。

葵ちゃん、ロードは葵ちゃんのライバルではないさ。



先輩のライバル
アレンのライバルさね。


――――――

ホラーを書くつもりは毛頭なかったんだが。ロードは葵ちゃんが大好きなんです。



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