流石に連日飲み続けて、気持ちも体もクタクタになったオレは休日を一人部屋で過ごす事にした。
「なあセリ、京介なにやってると思う?」
ワンともクンとも言わず舌を出しながら尻尾を振り続けるセリに聞いてみる。
(つかオレ、何やってんの…?)
気付けば頭の中は京介の事ばかりで、セリにまでこんな事を聞く始末だ。
時計を見ればまだ夕方近くで溜め息しか出てこない。
昼に起きて掃除や洗濯して、テレビ見たり営業メールやっても京介が何をしてるのか気になって仕方ない。
素直に電話すればいいんだけど、もし京介が寝てたり用事があったらヘコむのはオレだ。電話しても、すぐ切らなきゃいけなかったら寂しいだけだし…。
こんな事を起きてから頭の中で繰り返しては溜め息ばかり吐いてる訳だ。
「散歩でもいくか…」
ここで初めてワン!と声を上げるセリに何だか悲しい気持ちになった。
オレンジ色に染まった空を見上げて、休日だと実感する。
普段ならこの時間は支度をしてるか同伴だ。
思えばホストを始めてから夢中で「世莉」をやってきたような気がする。
朝起きるのが得意だったのに、今はその朝に寝て…飲めなかった酒もかなり飲めるようになった。見た目もだいぶ変わったし、人見知りもなくなって…。
それを作り上げてきたのは「世莉」というホストを演じる為だ。
けど、京介と…斗真と会ってから、オレは「京介」にもどりつつある。
「世莉」は派手でプライドが高い。相手に合わせた接客もできるし、会話の幅を広げる知識もある方だ。
けど「京介」は基本的に寂しがり屋で、とにかく人がいないとダメな奴。いつも友達とツルんでた。
彼女ができれば彼女ばかりになって自分の事が疎かになる。
何してるのか気になって電話したり、会いに行ったり…それも「特別」という関係にあるから何かしたいと思う訳で…。その事を、ホストを始めてから気付いたんだ。
だからオレは特別を作らない。
そう思うのは気持ち的なモノなんだ。
今だって斗真の事が気になって仕方ないし、こういう気持ちは惚れてる証拠だと思う。けど、まだオレ達には“壁”があって、それがあるお蔭で「世莉」をやっていけてるのも確かだ。
もし京介と恋人関係にあったらオレは迷わず電話して、相手の都合なんか考えず会いに行ってるだろうから…。
そういう自分は好きじゃない。
Queenに居る以上はどこに居ても「世莉」だから「京介」の部分は見せちゃいけないんだ。