MIRROR-NEURON |




 ぬめぬめとしていた手が、気が付いた頃にはパサパサと乾燥していて、手についた赤い破片はポロポロと落ちていった。爪の隙間にも、手の皺の際にも、隅々まで入り込んだこの赤いものを取り除かなければと思った。赤い。饐えた匂いがして、気持ち悪かった。吐き気が、食道のなかをせり上がってきて、急いで水道に駆け寄った。吐き気にえずきながら手を擦り合わせた。水を得て破片は液体に戻り、水道に流れ込んでいく。赤の渦を巻いて。息が苦しくて、必死に吸っては吐いて、口端からはだらし無くあえぐ声が漏れた。情けなく震えた声だった。食道が広がって、我慢もならず吐く。幾度か繰り返し、出すものが胃液だけになってもそれはなかなか止まってはくれなかった。その間にも、必死に手を洗った。だって赤は、似合わないのだから。


 どろどろに塗れた全身が、今なに色をしているのか。それを考えるととてもとても楽しかった。子供のようにウキウキとする。落ち着かなく手をわきわきとさせた。その手の、爪の隙間にも、手の皺の際にも、隅々まで入り込んだこの赤いものにひどい愛着を感じた。何とも言えぬ匂いに満たされて、震えた。快感とも、充足感とも言える感覚で全身は満ち満ちた。尾てい骨の底から脳味噌の奥まで響く圧倒的な熱波。腹筋が自然戦慄くのが分かった。どこかへ昇っていくかのような、浮遊感、身がふわふわとたゆたう。じんわりとした感触が下半身にひろがる。ふう、と息を吐いた。その色だけに塗れた身体をいとおしくてぎゅっと抱き締める。満足感、達成感。やはり赤が、こんなにも似合う。





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