after ! after !
/「Happily ever after! 」後日。
/スタンド・アップシリーズ設定のNY青黄
/お題「スタンド・アップシリーズの設定でパパラッチも思わずほんわかする青黄爆ぜろ話」



――――25.12.20XX

『Happy holidays ! どんな夜をお過ごしかな?』
『Good evening, everyone ! 今夜のNYは眠れないぞ!実力伯仲のBIGカード!』
『NYK vs BKN のNY対決を、ここマディソン・スクエア・ガーデンからお送りします!解説はお馴染み、私――――と、元NJNの名PG――――!試合中継にはスペシャルゲストも合流予定だよ!』
『よろしく!』
『さてさて。今季二度目の対戦になるこのカードだけど、君はこの試合をどう見る?』
『前回バークレイズ・センターでの試合はアウェイのニューヨークがエース・メロの活躍でホームブルックリンを下したんだったね。』
『だね!ブルックリンは今季スタートダッシュに失敗して、あの試合も守備の隙を突かれての敗北だった。メロのトリプルダブルもあって、ブルックリンは貫禄負けかな。攻撃は噛み合ってただけに惜しかったんだけど。』
『昨季チームの守備を支えていたジョシュアが怪我で離脱して、控えに課題の残るブルックリンは鍔迫り合いになるとどうにも弱いね。でもここ数試合のゲーム内容は中々いいんじゃないかな?』
『その通り!ダイキを守備的に使い出してからシステムが上手く回っているね。あのマンマークは効いてるよ。まあダイキ自身はフラストレーションが溜まっているかもだけど。』
『HAHA, 確かに。あんなに守備をするダイキは初めて見たかも知れないよ!』
『奔放でエキサイティングなオフェンスが持ち味の選手だからね。おっ!ロースターを見ると、ジョシュアが故障者リストから復帰している。噂では復帰はそろそろだから、今日の試合あるかもね。』
『アップにも姿があったよ。楽しみにしよう!さあではここで昨夜行われた4試合のハイライトを――・・・』


 クリスマス・ゲーム。
 近頃のアメリカでは多宗教が入り交じる御国柄的に"クリスマス"ではなくただ"ホリデー"とだけ表現することが多くなってきていたが、いくら呼び方が変わろうとその盛り上がりが収まる訳ではない。縮小どころか規模拡大の一途を遂げているのが、NBAのクリスマス・ゲームだった。
 「 BIG 」と銘打たれ、その名の通り今季注目のBIGカードの試合が複数組まれる。ブルックリン対ニューヨークの地元対決も、そのBIGカードのうちのひとつだった。

 青峰がロッカーに入ると、チームメイト達から口々に「Happy holidays.」の声がかけられる。壁にかけられたホワイトボードには小さなリースが貼付けられ、部屋の隅にはチームグッズで飾られたツリーが控え目に置かれていた。
 自らのロッカーに掛けられたユニホームも普段とはデザインの違うクリスマス仕様であり、まさにクリスマス一色。お祭り気分である。
「Hey, ダイキ!」
 チームでも仲の良いレックスがサンタ帽を被ってやってくる。
「Happy holidays, レックス。なんだそれ?」
「ふっふ、良いだろう!チアの子に貰った!」
 ロッカーに来るまでの廊下で、青峰も確かにサンタコスチュームを纏ったチアの女の子達とすれ違っていた。その余っていた衣装を貰ったというレックスは、下世話な顔で帰ったら妻に…とぐふぐふ笑った。この冬子供が産まれるというレックスの妻のあの大きくなったお腹で果たしてコスチュームが着れるのか、というツッコミは脂下がった間抜け面に免じて勘弁してやろう。
「はいはい。お熱い事でー」
「お前に言われたくねぇよダイキ!写真見たぞ〜!」
「写真?」
「なんだ知らねぇの?ん?ん?」
 含み笑いでうざったく絡んでくるレックスを青峰は振り払い、さっさと着替えに入る。
 近年になってNBAはこれまでのノースリーブ型のユニホームに加え袖付きのユニホームの導入を考えているらしく、プレシーズンゲームやこういった特別試合などでは半袖ユニホームの出番が多くなってきていた。
 最初は、腕回りの機動性が損なわれるのではないかと不信の目のあったこのユニホームも、着てみれば思いの外着心地が良い。フィット感のある袖口はスリーブなんかと一緒で筋肉の疲労蓄積を軽減する効果があるとかないとか。まあ、機能は良しとしてもそのデザイン性への評価はあまり高くないのが現状であるが・・・。かく言う青峰も、初めて着てみせた時に恋人の爆笑を買ってしまっていた。
「お、そのバッシュいいな!」
 着替えを終えバッシュに手を出した所で、またレックスが声を掛けてくる。背番号が近く、ロッカーも隣なのだ。陽気でおしゃべりなこのプエルトリカンの標的に青峰はよくなっていた。
「ははっ、ヒールに雪だるまの柄入ってる。お前にしては可愛いチョイスだな。」
「あいつが選んだんだよ。知らねーうちにメーカー担当の奴と仲良くなりやがって・・・」
 会場装飾にグッズ、ユニホームまでクリスマス仕様なら、選手のバッシュだってクリスマス仕様になる。NBAレベルのバスケットボール選手ともなれば使い捨てに近い感覚でバッシュも使う。たった数回の使用の為にスポーツメーカーは躍起になってデザインを考案するのだ。
 青峰にはよく分からない世界の話であるが、選手がたった一試合でもそのデザインのシューズに足を通すだけで、売り上げの幅がとてつもなく違ってくるのだとか。それが有名選手ともなれば相当だ。
 青峰の場合、チームの看板選手のひとりであるだけでなく、現状NBAでプレイする唯一の日本人選手という付加価値もついてくる。青峰大輝という存在に、スポーツメーカーは”アジアマーケットの開拓"という計り知れない夢をも抱いてもいるのだ。
 ――と、まあそうは言ってもそこらへんの事情にめっきり疎いのが青峰大輝である。機能性が高ければカラーなんて青一色でいいとか黄色一色でいいとか、そんな程度の意見しか出して来なかったなんとも商売し甲斐のない男だった。
 しかしそれが近頃になって少々事情が異なってきている。それは最近、ある騒動を巻き起こしつつも公になった青峰の恋人の存在故だ。彼は青峰と違ってファッション・ビジネス界にも明るかった。理解ある商売相手を見付けたメーカー担当者は、近頃などめっきり青峰の存在などすっ飛ばして彼の方に相談を持っていく始末。
 年明け発売が決定になっている青峰モデルのバッシュなど、宣伝の段階ですでにそのスマートなデザイン性に多くの評判を得ているのだ。メーカーの信頼は、偏っていくばかりだ。
 話を聞いたレックスも、納得した様な顔で大きく頷くとやっぱりか!と大きな声で言う。なんとなく、解せない気持ちの青峰である。
「お前がこんなさり気ない洒落っ気だせる訳ねぇもんな〜なるほど!」
 女の子はこういうワンポイントに意外と心くすぐられたりすんだぜ!と要らぬ情報までレックスはくっちゃべってくれる。まったくよく回る舌だった。


 試合は前半、まさに一進一退の攻防で1点を競う熾烈な試合模様となった。
 特別試合という雰囲気とともに会場の熱気は最高潮であり、選手同士も先程から乱闘寸前の緊張感に普段以上の集中を見せている。
 短いハーフタイムを綿密なミーティングで終え、再び選手達がコートに戻ってくる。
 そこに姿を現したひとりに会場の歓声とブーイングが一気に増した。
『ここで第3Qからの選手交代。故障で戦列を離れていたダニエルズの復帰第一戦はこの記念すべきクリスマスナイトになりました!』
 ジョシュア・ダニエルズの名が会場にコールされ、チーム信頼のディフェンスマンの登場に黒のブルックリンは歓喜を、ブルー&オレンジのニューヨークは盛大な野次を飛ばす。
『さあ、勝負はここからです!ジョシュアをセンターに据えブルックリンはダイキを筆頭に超攻撃的布陣!試合が動きます――!』

 ふいに、鼓膜を潰す様な大歓声のなかすべての音が遠くなる様な感覚を青峰大輝は得る。
 バッシュの紐を結び直し、ヒールの雪だるまに軽く触れる。左右で巻いているマフラーの色が違う雪だるま。それを最初見た時青峰は、ああなんて可愛い事をあいつはするんだろうと数分声も出ず悶えた事を思い出す。
 今夜も、そんなあいつは会場のどこかに居るはずだった。
 年間シートを買えばいいものを、あいつはいつも試合の度にチケットを購入する。毎試合座る位置の違うあいつを、探すだけでも一苦労だった。
 でも、試合をしていれば青峰は自然と感じる事が出来た。あいつからの視線、歓声、感情の波を。熱い熱気のような予感のままに青峰は顔を上げる。必然のように結ぶ視線の先、光り輝く金色を捕らえる。
 Never forget this night !――忘れられない夜に。そう、クサい台詞を吐いて青峰は拳で胸を叩き、にっと笑う。
 真っ直ぐに指差された観客席の先、やってみろよ!とでも言うように挑発的に笑い返すあいつがいた。


『Wooow !!! 』
『Oh my…! Oh my goodness ! 見たか今の!?』
『第4Q残り5分!見事なスラムダンクで今季シーズンハイの38得点目!後半に入ってブルックリンの勢いが止まらなーい!』
『NYにゴールの雨を降らせます、ダイキ・アオミネ!』
『ジョシュアの投入でダイキの守備負担が一気に減って、のびのびとプレイしているね。それにしても!』
『Oh ! 今度は見事なフローターから…エンドワン!3点プレーになります。点差が15に開く!ニューヨークたまらずタイムアウトだー!』
『今夜の主役はこの男で決定か!?』
『それにしても、ハーフタイム明けのパフォーマンスもあったが、ダイキは分かり易い男だな〜』
『HAHA, 今日は彼のSweetyが観戦に来てるからね。めったな姿は見せられないさ。』
『ダイキのベタ惚れっぷりは有名だからな。あのスキャンダル以来、彼は完全に開き直ってるよ!先日だって写真を撮られてたろ?』
『スケートデートの写真だね。僕も写真を見たけど、流石としか言えないよダイキ…hahaha! 』
『昨年騒動になったときは最初どうなるかと思ったが…収まるところに収まったなぁ。』
『タイム誌の今年のベストカップル賞候補に挙がってるんだろう?いやぁ、これはもう笑うしかないね!』
『Yeah, そして彼らの末永い幸せを願うしかない!』
『That's right ! まさにめでたしめでたし、ふたりは幸せに暮らしましたとさ...かな。
 さあ!タイムアウトを明けて再び試合開始です!ニューヨークは果たしてブルックリンの勢いを止める事が出来るのか――・・・』



 Happily ever after !
      ――末永くお幸せに!

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