トルテ


同室者に監禁されてから二ヶ月が経った。
最初は同室者の部屋内しか行き来出来なかった鎖の長さも今じゃ寮室内ならどこでも行ける長さまで伸びた。

あれからのことを話すと長い。から、はしょって説明することにする。

あのあと同室者が帰って来た時、寝る前に決めた通り性病のことについて説明したら『お前と一緒に死ぬなら良い』と言われてしまった。俺と一緒に死んでもなにも良いことはないと思うけど、本人がそう言ってるなら他人が口に出すことも無いかとそこはスルーして、どうして繋がれてるのかと質問したら同室者は半狂乱になりながら、“俺のことが好きだから自分以外の奴が俺に触れたことが許せない”とか“自分以外に触れられた俺も許せない”とか“だから一生そんなことが無いように閉じ込めるんだ”のようなことを説明してくれた(なんせ半狂乱だったから聞き取れなかったりして内容は曖昧だ)。

まず注目すべきはココ、『俺のことが好き』だ。まず、俺は顔面的にも性格的にも人に好きだと言われたことがない。家族にすら見捨てられたほど可愛いげの無い子供だ。つまり、半狂乱で叫ばれたコレが俺にとっての初・告・白!
こんな俺が人間様に告白されるなんてそれだけで恐れ多いけど、欲を言うならば正気の時に言ってほしかったと思う。

二つ目に注目すべきは、『他人に触れられた俺も許せない』という部分だ。一つ言いたいのは、俺だって好きで強姦された訳じゃ無いんだからお前に慰められはすれ、責められる謂れは無い。ということだ。あと、帰宅した俺を無理矢理押し倒したお前も、俺からしたら最初の奴らと同じだからな、とも言いたい。これを言ったら同室者がオカシクなるかもしれないから言わないけど。すでにオカシイという突っ込みはなしの方向でお願いする。

その日は半狂乱になった同室者に再び犯された後気絶して終わった。

次の日からの一週間は俺の黒歴史だからあまり詳しく説明したくない。ただ、前まで好きだった腸内清浄のための浣腸とか、とりあえずスカ系はもう読みたくない、とだけ言っておこう。俺は部屋内しか移動出来ない短い鎖に繋がれてたんだ。あとは察してくれ。
そして暗黒の一週間を過ぎて、何とかトイレと風呂とキッチンまで行ける長さの鎖にしてもらった時の俺は暗黒の一週間の所為で随分やつれてたと思う。

その日からの一ヶ月は、同室者の精神状態がとても不安定だった。なにかあれば狂乱し、物に当たり俺に当たり。ただ、俺に暴力を奮った後は必ず泣いて謝って来るからつい許してしまったりする。典型的なDV旦那から抜け出せない妻の状態だ。
今まで馬鹿にしてた被害者の奥さん達の気持ちが今なら理解出来る。あんな情けない顔で謝られたら許すしかないだろう。

そんな暴力と涙に塗れた一ヶ月も過ぎて、現在。同室者も比較的落ち着いていて、俺も生傷が絶えない日々から解放された。同室者は我慢を覚えたのか、なにかあったら暴力に訴えるのではなくセックスにて解消するようになったのは進歩とも言えなくもない。ただ、手放しで喜べはしないけど。下品な話だが、俺からしても痛いより気持ちいいほうが好きだからまあ良い。
たった二ヶ月で俺も随分開発されたもんだ。今なら乳首だけでイけたりする。興味ないか、そうか。

ああ。そういえば、同室者によると俺は同室者の実家に養子として迎えられて、実質、実家に捨てられたらしい。よく分からないんだけど、同室者が両親に頼んで俺の実家に俺を養子に迎えたいと言うと、実家は喜んで了承したらしい。愛されてるだなんて馬鹿な事を思ってたわけじゃないけど、少しショックだったのも事実だ。
ちなみに同室者は、そんな俺を笑いながら『良樹を大事に思う人間なんて俺以外に居るわけないだろ』とフォローなのかフォローじゃないのか、とりあえず俺の傷口に塩を大量に塗りたくる様なことを言ってきたが、冷静に考えれば俺を大事に思ってくれてる人間が少なくとも一人は居るって事だから、同室者なりのフォローだったのかもしれない(というかそう考えないと、目からきらめくナニカが零れそうになる)。


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