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あの日の帰り道の一件以降、俺と名字さんの空気はさらに微妙な感じになってしまった。会話はするけど、お互いなんとなくよそよそしくなってしまう。うまくいかねーもんだなぁ…どうするかな。俺は日々、現状打開策を考えていた。
そんなある日の放課後、部活に行こうと荷物をまとめていた俺の元に、クラスの女子が声をかけてきた。


「花巻君、ちょっといい?」
「何?部活行くんだけど」
「2組の子がね、花巻君に話があるって…」
「あー…」


俺はちらりと名字さんの様子を窺った。今のやり取りがきこえていないのか、俺の方を見るそぶりすらない。
名字さんが気付いていないうちに、さっさと用件をきいて終わらせてしまおう。俺は声をかけてきた女子に、分かった、と返事をして2組に向かった。


◇ ◇ ◇



2組には数人の女子がいて、俺が来たことに気付くとキャッキャとはしゃぎ始めた。数人いた女子の中の1人が俺の方へ近付いてくる。見た目は、まあ可愛い方。ザ・女の子って感じのふわふわしたオーラがある。


「あの、花巻君」
「うん。話があるのってキミ?」
「はい」
「ここできいていい?」
「……、あの、私…花巻君のことがずっと好きでした」
「そっか……でも俺、彼女いるから」
「名字さんと本当に付き合ってるの?」
「うん」


俺は素直に返答した。何も嘘は吐いていない。けれど、目の前の名前も知らない女の子は、俺に訝しげな表情を見せてきた。どうやら信じてもらえていないらしい。


「なんであんな子と付き合ってるの?」
「逆にきくけど、名字さんの何を知ってんの?」
「だってあの子、地味だし、可愛くないし、花巻君には釣り合わないよ」
「俺が選んだ子のこと、悪く言わないでくれる?俺の付き合いたい子は俺が決める」


すごく腹が立った。名字さんのことを何も知らないくせに、平気な顔をして彼女のことを否定する、その子に。
全然関係ない他の女子までもが、なんでー?名字さんって可愛くないよね?などとヒソヒソ言っている声がきこえる。だから、お前らが名字さんの何を知ってんだっつーの。


「話ってそれだけ?俺、部活行くから」
「あ、ちょっと、花巻君!」
「何言われようが、俺は名字さんのことが好きだから」


未だにごちゃごちゃ言っている女の子を無視して、俺は2組の教室を後にした。あー腹立つ。女の子じゃなかったら殴っていたかもしれない。自分のことはどう思われてもいいが、好きになった子のことを悪く言われるのはこんなにもイライラするし許せない。
部活でストレス発散してやろうと廊下を歩いていると、3組の教室内に名字さんがいるのが見えた。いつもならバイトがあるからってすぐに帰るのに、なんで今日は残っているんだろう。


「名字さん?まだ帰んないの?」
「…花巻君は、2組の子との話、終わったんですか?」
「え?あー…うん。きこえてたんだ」
「告白、されたんじゃないんですか」
「断ったよ。名字さんと付き合ってるからって。……もしかして、それが気になって残ってくれてた?」
「それで、その女の子は納得しましたか?」
「は?」
「私と付き合っていることを伝えて、その子は納得しましたか?」


俺の質問には一切答えず、逆に質問ばかりしてくる名字さん。なぜか嫌な予感がして、口籠る。きっと名字さんは、答えが分かっていてきいてきたのだ。


「納得、しなかったでしょう」
「それが何?」
「私達は周りから認められていないんです」
「周りのことは関係ないじゃん。俺と名字さんがどうしたいかが問題なんじゃねーの?」
「花巻君はもっと可愛い子と付き合うべきです」
「は?何言ってんの…」
「今まで付き合ってくれてありがとうございました。さようなら」


一方的に別れを告げ、名字さんは逃げるように教室から出て行った。追いかけることもできず、俺は呆然と立ち竦む。
散々好きだと言ってきた。俺は名字さんが良いと伝えてきたつもりだった。けれど、名字さんには、伝わりきらなかった。だからこんなことになったのだろう。
周りから認められてないから何だよ。もっと可愛い子って誰?俺、名字さんより可愛い子なんて知らねーよ。こんなに必死になったのも初めてなのに。
俺は、去り際に言われた、さようなら、が単なる挨拶なのか、俺達の関係に対するものなのか分からぬまま、重い足取りで体育館へ歩き出した。


どうして、だけで一杯



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