×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
bavarder


名字さんが帰った後、俺達は男3人で飲み直していた。
黒尾さんの職場の同僚だと言われて初めて名字さんに会った時の印象は、可愛らしい人。しかし話してみると、良くも悪くも期待を裏切るキャラクターだった。
裏表のない性格で誰とも分け隔てなく仲良くなれるのは良いところ。女性としてはちょっと(いや、だいぶ…)ガサツで色んなことに鈍感なのは悪いところ。
今日はそんな彼女の鈍感さゆえの悩み相談で集まったわけだが、いかんせん内容が内容だけに彼女の納得のいくアドバイスはできなかった。彼女は不満そうだったが、余計なことを言いすぎたら後で黒尾さんに何を言われるか分かったものではないから、こちらだって大変なのだ。


「あの2人、早くうまくいきませんかね…話きいてたらイライラするんですけど」
「ツッキーはイライラ隠してなかったけどな!」
「でも、少しは前進してるから…やっと名字さんが黒尾さんを意識し始めてくれたわけだし」
「確かに!青春してるよなあ!」
「青春って。もう社会人なんですけど」


月島が鼻で笑いながら言い放ったセリフは、確かにその通りだと思う。学生時代のような青春をしている年齢ではないはずだ。けれど、あの2人を見ていたら木兎さんの言う、青春、というのも間違いではないように感じるから不思議である。
黒尾さんは、今もそうだが、学生時代からモテていた。今まで付き合っていた人も何人か知っているが、俺の知る限りはそこそこ美人だったり可愛らしかったりと、性格も含めて女性らしい人ばかりだったように思う。だから名字さんと仲良く話す黒尾さんを見た時は、正直驚いた。
名字さんは可愛らしいと思うけれど、性格はどちらかというと男勝りというか…失礼な話、女子力が欠けているタイプだ。今まで黒尾さんと付き合ってきた女性のタイプとは真逆といっても過言ではない。けれど、なぜ、と思う反面、普段通りの気取っていない黒尾さんの姿を見ると、お似合いだと思ったのも事実である。


「赤葦さんは黒尾さんからも色々きいてるんですよね?」
「色々ってほどでは。でも、一緒に飲んでたら何となく分かるから」
「黒尾が名字に言っちまえば良いのになー!」
「みんなが木兎さんみたいに何も考えずにストレートな言葉を口にできるわけじゃないですからね」
「言えてる」


そう、木兎さんみたいに思ったことをすぐ行動に移すような、頭と体が直結しているような人間ならば誰も悩んだりはしない(現に木兎さんには悩みがない)。黒尾さんにも名字さんにも、きっと恐れていることや回避したいことがあるのだろう。お互い大切な存在だからこそ、なかなか踏み出せないでいるのは何となく分かる。全く、第三者から見れば明らかにうまくいく2人なのに、焦れったいことこの上ない。


「もしまた名字さんに相談にのってほしいって言われたら、僕達も呼ばれるんですか?」
「俺と名字さんが2人きりで飲んだってことを知ったら、黒尾さん、どうなると思う?」
「ああ…確かに」
「名字は赤葦と2人が良かったみたいだけどなー。黒尾怒るもんなー」


木兎さんにまで黒尾さんの気持ちがバレているのに名字さんが気付かないのは、当人のことだからなのか、ただ彼女が鈍感だからなのか。恐らく後者だろう。彼女は他人の色恋沙汰にも鈍感そうだ。


「2人がうまくいったら何してもらいます?」
「ツッキー悪そうな顔してんぞ!」
「でも確かに、こんなに協力してあげてるんですからね。何か見返りがないと」


世話の焼ける2人の話を酒の肴に、今日も夜は更けていく。



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _
bavarder=お喋り、閑話


6/40

PREV TOP NEXT