×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
ravissant jalousie


色々あったけれど、私と黒尾はめでたくお付き合いすることになった。黒尾によると、赤葦達3人は私達2人の気持ちを知った上で、うまくいくようにサポートしてくれていたらしい。確かに、今思えば、明言は避けつつも私を後押しするようなことを言ってくれていたような気がする(月島はもう少し優しくてもいいと思うけどね)。
というわけで、きちんとLINEで付き合うことになったと報告した。

世話が焼けるカップルですね。精々仲良くしてください。by赤葦
今度いい店で奢ってくださいね。赤葦さんがリサーチしてくれてるんで。by月島
良かったなー!長かったなーお前ら!仲良くしろよ!by木兎

3人とも祝福してくれているのは分かるけれど、素直に祝福してくれたのは木兎だけだった。木兎は馬鹿だけど1番優しいよ…ありがとう。
さて、そんな私達は付き合い始めてどうなのかと言うと、何も変わっていなかった。もともと仲が良かったため距離感が縮まるわけでもなく、社内でも全く気付かれない。社内恋愛は禁止されていないし隠しているわけではないけれど、自分達から公言するのは違うような気がして放置している。
そんなある日の昼休み、私は給茶室でお茶を淹れていた。そこへやって来たのは黒尾だ。


「お疲れー」
「お疲れー。黒尾もお茶飲む?」
「俺はコーヒー派なの」
「気取っちゃって。お茶は日本人の心なんですー」
「意味分かんねーわ」


前みたいに黒尾と他愛ない話ができるのは嬉しい。暫くそこで話をしていると、私の2つ年下にあたる後輩の男の子がやって来た。
彼は人懐こくて社交的な好青年だ。最近、同じ企画を任されることになって話す機会が増えたけれど、仕事もそこそこできる。


「あ、名字さん。お疲れ様です」
「お疲れー。あ、お茶飲む?」
「良いんですか?」
「どうぞー」
「いただきます!」


こういうところが素直で可愛い。さっきの黒尾とは大違いだ。


「そういえば名字さん、お煎餅好きですか?」
「うん?好きだよー」
「お茶に合う美味しいお煎餅があるんですけどいります?」
「ホント?いるいるー!」
「デスクに置いてあるんで、一緒に食べましょうよ」
「あ、うん。分かった……「お話中ごめんネ?」


後輩君との話が意外にも盛り上がってしまい忘れていたけれど、そういえば黒尾がいたんだった。話に割り込まれて、私は漸く黒尾の存在を思い出す。
ていうか、口は笑ってるけど目が笑ってないよ黒尾。怖いよ。


「キミ、名字の後輩?」
「え?あ、はい。そうです」
「随分仲良さそうじゃん」
「えーと…名字さんには、最近お世話になっていて…」
「ふーん?あのさ、」
「はい?」
「こいつ、俺のだから。取らないでネ?」
「ちょ、黒尾っ…!」


真っ黒な笑顔を携えたまま、黒尾は後輩君にとんでもないことを言ってのけた。会社でそんな恥ずかしいことを言うなんて、どういう神経してるんだろう。これじゃあまるで、付き合ってますって言ってるのと同じじゃないか。
私は恥ずかしくて俯くことしかできない。後輩君は黒尾の言葉の意味を察知したのか、すみません、とだけ言って去ってしまった。


「黒尾!なんであんなこと言ったの!」
「俺がいるのに無視して楽しそうに話してるからムカついて。つい」
「何それ、意味分かんない」
「俺の可愛い名前ちゃんに、変な虫が寄り付かねーようにしただけですけど?」
「なっ…何言ってんの!」


からかわれていることも、私の反応を見て楽しんでいるだけだってことも分かっている。それでも、なんとなく愛されてるのかもって思ってしまったから、私の身体は熱くなるばかりだ。


「何?照れてんの?」
「違う!」
「午後からは注目の的だろうなー俺達」
「誰のせいよ!」
「俺は別に気にしねーもん。それとも知られたくなかった?」
「別に…そういうわけじゃ、ないけど…」
「じゃあ、良いんじゃね?」


ニィと口角を上げる黒尾は、これからの展開を楽しみにしているようだった。
なんでいつも、そんなに平然としていられるんだろう。1人でテンパってる自分の方がおかしいみたいじゃないか。そう思って心なしか落ち込んでいると、クシャリと頭を撫でられた。


「さっきのやつにあんまり近付くなよ」
「同じ企画やってるんだから、そんなの無理でしょ…なんでそんなこと黒尾に言われなきゃいけないの」
「お前、もっと危機感持てよな。気が気じゃねーわ…」
「何?嫉妬?」
「そう。悪い?」


じゃーな。私の頭をぐしゃぐしゃしてそれだけ言い残すと、黒尾は行ってしまった。
何よ。なんでそんな嬉しいこと言って逃げるのよ。ずるいじゃんか。私のこの胸のドキドキをどうしてくれるんだ。
私なんかのために嫉妬してくれたことが嬉しくて、どこか擽ったくて。私は火照った顔を冷ますために、いつの間にかヌルくなっていたお茶を喉に流し込んだ。



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _
ravissant jalousie=愛しい嫉妬


16/40

PREV TOP NEXT