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bavarder 2


赤葦さんから招集がかかった。さすが赤葦さん、仕事が早い。僕は面倒ながらも参加する旨を返信した。


事の発端はつい2日前のこと。黒尾さんから呼び出され渋々出向くと、そこには赤葦さんと木兎さんもいて、嫌な予感しかしなかった。
呼び出された時点でそんな気はしていたが、やはり名字さん絡みのことで、黒尾さんはかなり荒れ模様だった。たぶん、社会人になって1番荒れていたのではないだろうか。
名字さんは何をしでかしたのかと思い話をきいてみると、なぜかここ数日、会社では避け続けられるわLINEも無視されるわで散々な状況だということが判明した。何それ、ちょっと面白いんですけど。そう思ったが、勿論口には出さなかった。
そんなこんなで黒尾さんの話をきき続け、どうにかしなければヤバいと判断したのだろう。赤葦さんは、名字さんに直接理由をきくことにしたようだ。そして、それが今日。


名字さんはなぜか黒尾さんに彼女ができたと思っているようで、不自然なまでに距離を置こうとした結果、現在に至るらしい。何それ、ほんとに馬鹿じゃないの。こんなバカップルに付き合わされている僕達の身にもなってほしい。
そんなことを思いつつ、赤葦さんも木兎さんも、そして僕も、名字さんを放っておけないのだから、随分とお人好しだと思う。先に帰って行った名字さんの顔は、頭がパンクしそうです助けてください、って感じだったけど、僕達にできることはもうないのであとは自分達でどうにかしてほしい。


「あの2人、面倒ですよね」
「なんでこんなことになるのか、全く分かりませんね」
「何悩んでんだろうな?」
「木兎さんには一生分からないと思いますよ」


そう、あの2人はすごく面倒臭い。黒尾さんは基本的に、そんなに面倒な性格じゃないしできる人だと思う(胡散臭さはあるが)。それなのに、名字さんのこととなると妙に慎重だし、奥手というか、とにかく遠回りしてばかりだ。
確か今まで付き合っていた人達には、普段通りの黒尾さんだったと思う。付かず離れずの距離感を保って、うまくやる。そんな印象だった。名字さんに対してそんな風にできないのは、本気だから、ということなのだろうか。


「早く付き合っちまえば良いのになー、アイツら」
「それができないから僕達がお膳立てしてあげてるんですよね?」
「お膳立ての意味があるか分かりませんけどね……本当に疲れる…」
「赤葦さんは名字さんから真っ先に連絡あるから大変ですね。僕なら飲みの誘い無視しますよ」
「……月島だって名字さんから連絡があったら俺と同じことをしてると思うよ」


赤葦さんが、そう言って笑う。根拠のない発言は赤葦さんらしくない。けれど、想像してみたら、なんとなくそんな気もした。だってあの人、放っておけない。
年上だし仕事面ではできるっぽいけど、手のかかる人。けれど、なぜか手を焼きたくなってしまう不思議な人。黒尾さんはそういうところが好きなのだろうか。


「アイツらがうまくいったら奢ってもらうかー!」
「当たり前でしょ」
「ですね。どこかいい店探しときます」
「赤葦任せた!」


ここまで僕達が頑張ってあげてるんだから、うまくいってもらわないと困る。面倒ではあるけれど、あの2人の成り行きを見守るのは僕達の仕事になってしまっているから。
2人で僕達にお酒を奢ってくれるその日まで、仕方ないから、待っていてあげよう。


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