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名前が去った後、図書室に残された3人はペンを走らせながらもヒソヒソと雑談を楽しんでいた。話題は勿論、名前のことである。


「松川ーさっきの大学のこと、ホントに分かってたのかよ」
「んー?まあ、カマかけてみたっていうか。名字さん、及川のことになると分かりやすいし」
「そうか?」
「岩泉は鈍感すぎ」
「同感」
「うるせぇよ」
「花巻も大概ツっこんでたけどな」
「見事にスルーされましたネ」
「及川のこと好きだとかの話か」
「そうそう。まあ態度で丸分かりだけど」
「最初は及川のことすげーウザそうにしてたのになー」
「今でもウゼェことに変わりはないだろ」
「でも、同じ大学目指すぐらいだから結構本気なんだろうな」
「及川もマジなんだろー?」
「今までの女とは違うんだとよ」
「へー。何がそんなにハマったのかねぇ」
「最初は自分に興味なさそうだったから面白半分だったよな?」
「たぶん最初から、割とハマってたんじゃねぇか」
「え。マジで?」
「遊び半分かと思ってたわ」
「弁当のおかず食ってた日あるだろ?」
「あー…教室で名字さんに食いついてた日か」
「懐かし!いつの話だよ」
「あの日から名字の話ばっかりになってすげぇウザかった」
「知り合ってすぐじゃん」
「マジかよ…胃袋つかまれた的な?」
「知らねぇよ」
「名字さんはいつから及川のこと好きになったんだろ」
「一緒に帰りだしてからとか?」
「試合見に来た後ぐらいからだろ」
「は?そうなの?」
「なんで岩泉、そんなこと知ってんの」
「あ?あー…なんとなくだ。なんとなく」
「怪しい」
「さては情報源があるな?」
「ねぇよ。ほら、手ェ止まってんぞ」
「話逸らした」
「益々怪しい」
「あー!ウルセェ!」


図書室だということも忘れてつい大きな声を出してしまった岩泉は、自分に集まる視線を感じて我に返ると、ペコペコと周りに頭を下げた。


「ムキになるところも怪しい」
「俺達に何か隠してんな?」
「…何もねぇよ」
「そういえば名字さんの友達で岩泉のこと好きそうな子いたよな?」
「え?そうだっけ?」
「ほら。ファミレス付いて来た子」
「あー…あの大人しそうな可愛い感じの?」
「名字さんと試合見に来た時、岩泉のことめっちゃ見てた」
「松川、そういうの目敏いよな」
「確か最後の試合も名字さんと見に来てた」
「名字さんの付き添いじゃね?」
「…岩泉、どうなの?」
「は?なんで俺にきくんだよ」
「あら?もしかして…」
「もしかして?」
「な、何もねぇぞ!」
「岩泉、また見られてる。落ち着いて」
「お静かにー」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「なんでそんなに動揺してんの?」
「何もないなら動揺しねーじゃん」
「……あー…もー……お前らなあ…」
「お。その反応はまさか」
「その子と、いい感じだったりして?」
「…付き合ってる」
「「は?」」
「だから。付き合ってんだよ」
「……岩泉が?」
「その子と?」
「だったら何だよ」
「…びっくりしすぎて数学の公式忘れた」
「英語の文法忘れた」
「お前ら俺のことなんだと思ってんだ」
「それで名字さん情報詳しいのか…納得」
「及川は知ってんの?」
「言ってねぇ」
「だよな。知ってたら真っ先に俺らに言ってくるもんな」
「名字さんも知らねーの?」
「付き合い出したの最近なんだよ」
「へー。じゃあ結構タイムリーな感じか」
「付き合ってどれぐらい?」
「………1週間」
「ホントにタイムリー」
「どっちから?そこは勿論、男前な岩泉からだよな?」
「お前ら楽しんでんだろ。言わねぇからな」
「岩泉が照れてる」
「新鮮ー」
「おい、勉強しろよ」
「大学どーすんの?」
「カノジョと同じとこ?」
「ほっとけ」
「及川と名字さんにも報告するか」
「よっしゃ、LINEしとく」
「おい!勝手なことすんな!」
「図書室では静かにしてくださーい」
「勉強してる人の迷惑になりまーす」
「……お前ら…帰り覚えとけよ…」


こうして、岩泉のちょっとした不注意によって、いつの間にか話題は及川と名前のことから、岩泉の恋愛事情に変わっていった。
翌日、及川が岩泉のクラスで大騒ぎして、岩泉が付き合っていることが学年中に知れ渡ることになろうとは、この時誰も予想していなかったのである。



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