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今更だけど念のために言っておく。俺は凄くモテる。そりゃあもう、学校中の男子が俺のことを羨んでも仕方ないってほどモテる(これは自慢じゃなくて事実だ)。
そんな俺は、名前ちゃんと付き合い始めた翌日、自分から交際宣言をした(名前ちゃんにそんなこと公言しなくていいって怒られた)。沢山の女の子達に衝撃を与えたであろうその情報は瞬く間に学校中に知れ渡り、今や俺と名前ちゃんの関係は生徒だけでなく先生からも公認となっている。
さて、そんな俺達だが、学校では本当に付き合ってるのか?と疑われるぐらい恋人らしくない(らしい)。元々クールビューティーで名の通っている(男子達の間では本当にそう呼ばれているのだ)名前ちゃんだから、イチャイチャできるとは思っていなかった。けれど恋人同士なら、帰り道に手を繋いだり、昼休憩に一緒にご飯を食べたり、他愛ない話をして笑い合ったり、そういうことぐらいしてもいいはずだ。
しかし現実はどうだろう。そもそも一緒に帰るのは月曜日だけだし(部活の練習を見に来てくれることはない…悲しい)、たまーに手を繋ぐことはあっても人気のないところ限定。昼休憩はそれぞれの友達と食べるし、他愛ない話なんてしようものなら冷たくあしらわれる始末。これでは付き合う前となんら変わりない。
2人きりのときはなかなか可愛い姿を見せてくれるけれど、周りに誰かがいる時の名前ちゃんは完全にドライモードなのだ。俺はこの状況をどうにかして打破したい。人前でもラブラブオーラを出してみたい!
そこで俺は、今週を勝手にラブラブ強化週間と銘打って色々な作戦を実行することにした。


月曜日。
とりあえず休憩時間はできるだけ話しかけ、昼休憩に一緒にご飯を食べようと誘う。あっさり断られる。めげずに明日はどうかと食い下がる。怪訝そうな顔をされたけど、そんなに一緒に食べたいの?ときいてきたから頷きまくったら、明日ね、と了承してもらえた(ちょっと笑ってくれた。可愛い)。部活がないので放課後一緒に帰る。下駄箱でさりげなく手を繋いだら振り払われた。デートに誘ったけど、どうやら機嫌を損ねたらしく断られる。


火曜日。
待ちに待った昼休憩、教室でご飯を食べようと思ったら名前ちゃんに、何してんの?と言われる。一緒に食べる約束したよね?ってきいたら、そうだよ、と返してきたので首を傾げた俺に、ここじゃなくて屋上で食べよう、と言ってくる。2人で食べているところを見られたくなかったらしい。渋々屋上でのんびり食べる。2人で食べられるのは嬉しいけど、これじゃあ誰にも見せつけられない。
部活は勿論見に来てくれないので、何もできず1日が終わる。


水曜日と木曜日。
強化週間なのに、努力の甲斐も虚しく、いつも通りの日常を送る。むしろ、努力の結果、なんで今週になってからやたらと絡んでくるの?と訝しがられた。つらい。


そして今日は金曜日。1週間が終わってしまう。勝手に始めた強化週間だけど、何もできていない…むしろ逆効果だったとすら思える。あれ?俺って結構イタくない?1人で企てて1人で落ち込む俺を見て、名前ちゃんは不思議がっている。


「及川、今週なんかおかしくない?」
「…おかしくないよ……いつも通り…」
「じゃあなんでそんなに落ち込んでんの…どうしたの?」


珍しく心配そうに声をかけられて、(勝手に)傷心中の俺は泣きそうになる。そんな俺を見て、名前ちゃんは益々心配そうだ。


「名前ちゃんとラブラブしたい…」
「は?何言ってんの?」
「だってさ…俺達付き合ってるんだよね?名前ちゃんがドライな性格なのは分かってるんだけどさ、たまには…ほんとに、たまにでいいから、恋人っぽいことしたい!」
「……だから今週、やたら絡んできてたの?」
「うん」
「……馬鹿じゃないの」
「うん、馬鹿かも」


名前ちゃんは呆れた様子で聞き慣れたセリフを言ってきた。そうだよ、馬鹿だと思うよ。でも、仕方ないじゃん。名前ちゃんと場所とか周りの目とか気にせず、仲良くしたいなって思っちゃったんだから。
なかばスネ気味な俺を見て、名前ちゃんが困ったように笑う。そういえば、付き合うようになってから割と笑ってくれるようになったなあ、なんて思っていると。頭を、撫でられた。他でもない、名前ちゃんに。え、名前ちゃん大丈夫?ここ教室だよ?


「分かったから、元気出して」
「見られてるよ?いいの?」
「元気ない及川見てたら調子狂うから、今日は特別にいいよ」


ヤバい、これは嬉しすぎて死ぬかも。いや、死なないけど。頭撫でてくれるしなんとなく笑ってくれてるし。教室にいるみんなが見てるし!
ごめん名前ちゃん。これはやっちゃダメなことかもしれないけど今日は特別なんだよね?
俺は頭を撫でる名前ちゃんの手首を掴んで立ち上がると、その細い身体をぎゅーっと抱き締めた。教室中から冷やかしの声が聞こえるけど気にしない。


「ごめん、名前ちゃんが可愛くて抑えられなかった」
「馬鹿」
「うん、俺って名前ちゃん馬鹿だから」
「何それ。変なの」


名前ちゃんはそれだけ言って、素直に俺に抱き締められたままでいてくれた。俺は名前ちゃんの耳元で、大好きだよ、と呟いてみる。俺の胸に顔を押し付けてるからよく見えないけど、ほんのり赤く色付いた耳が照れていることを教えてくれた。
クラスのみんなにこんな可愛い名前ちゃんを見せるのは嫌だから、やっぱりラブラブするのは2人っきりの時だけでもいいかな。


非日常は蕩ける


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