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ガンダム鹵獲作戦


数刻後、トレミーに緊急用のサイレンが響いた。
クルーたちはすぐさまノーマルスーツに着替え、各々の持ち場へ向かう。ガンダムマイスターたちはノーマルスーツに着替えたのち、ヘルメットを抱えてスメラギの指示通りガンダムへ乗り込んだ。


『キュリオス、ヴァーチェ、ラズグリーズを先行発進させて!』


先に3機のガンダムを発進させる。
整備の様子によると、デュナメスの整備はまだ途中らしい。


『トレミー、カタパルトモードに移行します』

『数十万もの通信装置をバラまいて、GN粒子の通信遮断領域を特定してくるなんて……こんな物量作戦が行えるのは、恐らく人革』


ラズグリーズに乗り込み通信を聞きながら発進の準備をする。
人革連なら物量作戦をしてもおかしくはない。厄介な手で位置を特定されたものだと、ディーアは思った。


『ヴァーチェ、ティエリア・アーデ、行きます』

『I have control。キュリオス、アレルヤ・ハプティズム、迎撃行動に向かう』


先にヴァーチェが発進し、続いてキュリオスが出る。
発進準備を終えたラズグリーズも続いて迎撃に向かう。ディーアは操縦桿に手を伸ばした。


「これ以上、深入りをするわけにはいかない……」


脳裏に浮かんだのは、アレルヤだった。これ以上はダメだ。身を引けと警告する。
目を瞑り、気持ちを入れ替える。


「ラズグリーズ、ディーア・アルカディア、敵機に向かう」


ラズグリーズが発進し、敵機に3機のガンダムが向かった。
正面から真っ直ぐと敵機は向かってくる。トレミーの左右から発進したキュリオスとラズグリーズ、ヴァーチェ。

スメラギの戦術では、こちらの作戦を見抜いた敵艦隊が3機を無視、直接本艦へ向かう。そうなれば予定通り敵軍の後方へ回り込んで挟み撃ち出来たが、敵はこちらの陽動を陽動で応えた。攻撃に向かった敵輸送艦に搭載されたモビルスーツは既に発進され、3機のガンダムは輸送艦の迎撃に時間をとられることになった。


『手間をかけてくれる』

『モビルスーツが搭載されていない? まさか』

「陽動された……ッ!」


陽動に気付いた3機は急いでトレミーに戻る。機動性により、ヴァーチェよりもキュリオスとラズグリーズが先に先行する。トレミーを発見するのは早かった。そこに敵機もいる。


『捉えたぞ……なんだこれは?』


敵機を捉えたアレルヤが、宙に散りばめられた小さな物体に気付く。
通信越しに聞こえた言葉に従うように、ディーアもモニターを確認する。二人が気付いた時には遅かった。


「なっ、機雷群……!?」

『誘われたっ!!』


機雷群の中を突進したキュリオスとラズグリーズ。爆発する振動がコックピットに響いた。
誘われた2機を確認した敵機は、隠していた輸送艦からモビルスーツを発進させる。
キュリオスとラズグリーズは、すぐさまそちらの敵機撃破に移動した。


『この程度でキュリオスが……う!』

「アレルヤ!」


突如アレルヤが苦しげに声をあげた。
その直後、ディーアにも頭を刺すような痛みが走る。
アレルヤとディーアは同じものを感じるが、その大きさは違った。アレルヤには耐えがたい痛みを伴うが、ディーアには一瞬電流が走っただけだった。


『同じだ……あの時と同じ痛み。いったい何が……あの機体は……』


先頭にいる敵機は、鮮やかな桃色のティエレンだった。あの時、低軌道エレベーターで起動テストを行った新型モビルスーツと同じだった。


『知っている・・・知っているぞ・・・! 僕はあの機体を知っている!』

「アレルヤ!」


眼前のティエレンからカーボンネットが放たれた。痛みで動かないキュリオスに代わり、それをGNライフルで破壊する。
すると桃色のティエレンが突っ込んできた。


「うッ!! この脳量子波……やっぱり!」


桃色のティエレンの手にある武器が振り下ろされる。GNビームサーベルでそれを受け止めつつ、背後にいるアレルヤに呼びかける。


「アレルヤ! 聞こえているアレルヤ!!」

『う、うぅっ・・・!』


一旦桃色のティエレンを弾き返し、背後のキュリオスを守るように構える。


「ッこのままじゃアレルヤが動けない! あのティエレンさえ遠ざければ!」


そうしていると双方から別のティエレンが迫ってくる。またカーボンネットが放たれた。
今避けたらキュリオスがかかる。しかし2機とも捕まるのは本末転倒。ティエレンを蹴散らしてカーボンネットを避けるしかなかった。キュリオスに其れは絡み付いて、アレルヤの動きを封じる。

すぐに助けに行こうとするが、ティエレン部隊に邪魔をされる。その間に、桃色のティエレンがキュリオス確保に向かった。


「ッしまった!!」

「テッキセッキン! テッキセッキン!」

「うあッ……!」


キュリオスに気を取られてたせいで、急接近してきたティエレンの攻撃をもろに食らった。すぐに体勢を戻し、ティエレンと一瞬で間合いを詰めて撃破する。


『来るな……来ないでくれぇ!!』


アレルヤの叫びも虚しく、桃色のティエレンが両手でキュリオスを掴む。
その直後、アレルヤが苦しさから悲鳴を上げた。


『ぐぁぁぁ! ぐ……ああぁぁ……!」

「アレルヤ! 声を聴いて、私に意識を集中させて、アレルヤ!!」


アレルヤは通信で響く彼女の声を辛うじて聴くが、痛みに耐え切れずに悲鳴を上げ続ける。ディーアがいうように意識を集中させようとするが、迫りくる苦痛の波にのまれる。


『うぅあ...ああぁ...!! ディーア......』


アレルヤはそこで意識を失った。
アレルヤの叫び声を聞いていた桃色のティエレンのパイロット、ソーマ・ピーリスは最後に放たれた名前に反応した。


『ディーア……あの脳量子波……まさか、あのガンダムか!』


ラズグリーズはキュリオス救出に向かおうとするがティエレンの邪魔を受け、なかなか近づけずにいる。そんなことをしているとキュリオスは輸送艦に収納されてしまい、ディーアは唇をかんだ。


「くそッ! アレルヤを……太陽炉を奪われるわけには!!」


すると桃色ティエレンが向かってくる。ビームサーベを振り下ろすが、その腕を押さえられ抱え込まれる。
動きを無理やり封じ込まれると、無理やり回線を開いて聞き覚えのある少女の声がコックピットに響いた。


『ディーア、そこにいるのはお前なのか! この脳量子波はお前のもだろう? 私だ、ソーマ・ピーリスだ!!』

「ッ! ソーマ・ピーリス……」

『やはりお前か! ディーア!!』


呼びかけるソーマとは反対に、ディーアはビームサーベルをふるった。ソーマはそれを避ける。その隙にキュリオスに向かおうとするが、ソーマがラズグリーズを阻む。


「退けッ! ソーマ・ピーリスッ!!」

『お前もつれていく! お前は此処に居るべきではないんだ!!』


別のティエレンが数機向かってくる。このままではカーボンネットが放たれてしまう。
桃色のティエレンをビームサーベルで攻撃しつつ、接近してくるティエレンをスラスターとバーニアを駆使して回避し、ライフルで権勢する。しかし数が多く囲まれてしまい、回避ポイントを失われる。


「ツカマル! ツカマル!」

「ッ!」


直後、目の前にあったティエレンが消えた。
ビーム攻撃にやられたようだ。どうやらティエリアが来てくれたらしい。


『別働隊がいたとは……』


ティエリアは『無事か、ディーア・アルカディア』と安否を確認し、ラズグリーズに目を向けた。。


「ティエリア、私よりもキュリオスを!」

『なに……? 敵輸送艦からキュリオスの反応……敵に鹵獲されただと!?』


キュリオスが人革連の輸送艦から反応された事から、ティエリアが驚きの声をあげる。が、すぐに舌打ちをし『何と……』と声を漏らす。


『何という失態だ! 万死に値する!』


ティエリアはGNフィールドを展開し、GNドライブ直結バズーカを構える。射撃体勢に入ったティエリアの狙う先は、アレルヤが捕まった敵輸送艦。


『アレルヤ・ハプティズム……君も、ガンダムマイスターに相応しい存在ではなかった』

「何をする、ティエリア!! アレルヤとガンダムだけでもなく、太陽炉まで失うつもりかッ!! 計画はどうする!」

『黙れ! このまま奪われるのなら、破壊して秘匿義務を全うするのが計画のためだ!』

「待って、ティエリア!!」


輸送艦に乗るキュリオスもろとも破壊しようとするヴァーチェを、桃色のティエレンが攻撃する。そのおかげでキュリオスは破壊されずに済んだ。


『ティエレンとは違う……新型か!!』


ティエリアが放とうとした砲撃は別に向かった。そのままフィールドを解除し、左右のキャノンで攻撃をする。だが、タオツーは素早い動きでそれを避けてみせる。


『二度も避けた!?』

「高機動型か!」


一度目は避けられても、ティエレンでは二度目は避けられない。超兵ようにカスタマイズされた新型だと、ディーアは理解する。


『輸送艦が……!』


ティエリアに言われて輸送艦に目を向けると、輸送艦は宙域から離れ始めていた。
このままでは逃げられてしまう。それは計画のためにも、何が何でも阻止しなければならない。


『ディーア、君は輸送艦を頼む。敵に奪われるわけにはいかない!』

「わかった!」


ラズグリーズは急いで輸送艦へ向かい、此処を離脱した。ヴァーチェとティエレンとの戦闘が始まる。
至近距離で放ったGNキャノンのビームは、桃色のティエレンの右脚部を殺ぎ落とした。


『調子に乗るな!』

『よくも……私のタオツーを!!』


タオツーの素早い動きにヴァーチェは翻弄されているらしい。
背後の様子を伺い、ヴァーチェの苦戦からすぐにでも引き返したほうが良いかとディーアは思案する。だが、輸送艦を守るティエレンがラズグリーズに向かってくる。


「このッ……邪魔をして!」


ティエレンの攻撃を回避し、確実に仕留めていく。何機かがカーボンネットを放って捕獲しようとするが、一般のティエレンの機動性ではラズグリーズを捕まえられない。

背後では、周囲のティエレンがクロー付きワイヤーを発射していた。それはヴァーチェの四肢を捕らえ、GNフィールドもキャノンも撃てないようにしている。
これではヴァーチェも捕獲されてしまう。


『……くッ! だとしても!!』


GNドライブの機動力を全開にする。ヴァーチェの四肢が微かだが動き、押さえる六機のティエレンを引きずるようにする。しかし背後から別のティエレンが迫ってきた。

完全に身動きを封じられたヴァーチェ。今からラズグリーズが向かったとしても、遅すぎる。
ヴァーチェが撃墜される、と思った瞬間。ヴァーチェの装甲がパージされて、新たな機体が現れた。二周りほど小さい其れは、宙に浮いているGNキャノンを掴む。


『ガンダムナドレ……目標を消滅させる』


ティエリアが無意識に防衛本能を目覚めさせ、ナドレの姿を明かした。ナドレは計画の崩壊を防ぐガードシステムの一つ、トライアルシステムを持っている特殊な機体。ヴェーダとリンクしている機体全てを制御かに置く、対ガンダム戦を予想して作られた機体だ。
それをティエリアは、無意識とはいえ姿を明かした。


「ナドレ……」


ナドレの機体を見る機会は一度もなかった。この機体は、ティエリア・アーデにのみ許された機体だから。ラズグリーズがディーア・アルカディアにのみ許された機体であるように。

ナドレは周りの自分を捕らえていたティエレンを一瞬にして破壊した。3機のティエレンが撤退していくが、ティエリアはそれを無視し宙に漂う。


『ああぁぁっ!』


ダンッ!と力任せにコックピットを殴るティエリア。


『何という失態だっ!こんな早期に、ナドレの機体を晒してしまうなんて! 計画を歪めてしまった……ヴェーダ……!』


怒りと悲しさを混ぜたティエリアの声が通信越しに響く。
ディーアは声をかけられなかった。誰よりも計画を遂行することを全てとした者同士、掛け合う言葉がなかった。