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03


――目覚める。

瞼を開ければ、見知った天井が広がる。暖炉の火がパチパチと音を立て、部屋を暖めている。吹雪が叩きつけられ、窓はカタカタと揺れていた。
ベッドから抜け出し、身支度を負える。起き抜けの紅茶を淹れ、静かな時間を過ごしていると、外から大きな音を叩きつけられた。

結界の外で雷が落ちている。この雷はオズのものだ。対して強い結界も貼っていないし、見知った者なら受け入れるようにしてあるのだから、外から呼ばずとも入ってこれるというのに。


「まったく、仕方のない子ね」


ため息を一つ零して、ティーカップを置く。指をくるりとまわして、朝のティータイムを片付ける。暖炉の火も消し、支度の終えた部屋を見渡した後、良い慣れた呪文を唱えた。


「《アモラード・フィネームオムニア》」



● 〇 ●



「私になにか用かしら、オズ」


魔法で城の一室から一瞬で外に出ると、目の前には杖を携えたオズが立っていた。赤い瞳がこちらを見つめている。

「はぁ、やっと来ましたか。遅いですよ」オズの背後でミスラが少し不機嫌そうにつぶやいた。「あら、ミスラもいるの。それにオーエンとブラッドリーまで・・・・・・ふふ、いつもの顔ぞろいね」オズの背後にはオーエンやブラッドリーもおり、北の魔法使いがほぼ勢揃いしていた。

視線を目の前のオズに戻し、改めて要件を尋ねると、オズは一歩距離を縮めた。


「ターリア、私に従え」


単純で、短い、聞きなれた一言。
表情を変えずに言い放つオズに、ターリアは間をおいてから、分かりやすくため息を落とした。


「相変わらず口数の少ない男ね」


「そんな言葉足らずじゃ何も伝わらないわ」まったく、と半分呆れながら腰に手を当てる。「いつも言っているでしょう。言いたいことがあるなら口にだして言いなさい。何も言わないままじゃ、何も伝わらないのよ」説教じみたことを言い放たれたオズは、表情を変えずに黙って聞いているが、その瞳は困ったように視線を泳がせていた。こうしてオズがターリアに叱られるのは今回だけではない。

「この際態度については良いけれど、そう簡単に従うほど安い女ではないのよ。私を従えたいのなら、ちゃんと言葉にして言いなさい」語気を強めて言い放つ目の前のターリアを、オズは眉間に皴を寄せつつ見つめた。大抵の人間は睨まれたなど思うだろうが、ターリアは一切気にせず、じっとオズが口を開くのを待った。


「・・・・・・今日、中央の国で、賢者と賢者の魔法使いのパーティーが行われている」
「あら、そうなの。ご挨拶が遅れてしまったわね」


渋々口を開いたオズが語る。ターリアは賢者への挨拶が遅れてしまったと申し訳なく思ったあと、ふたたび笑みを浮かべて「それで?」とオズを促した。


「・・・・・・全員、パーティーに出席しなければならない」
「ああ、だから後ろの3人が揃っているのね」


オズが後ろの3人を連れている理由が分かり、納得する。しかしそれで分かったと頷くことはせず「それで?」と、再び同じように聞き返した。何を言いたいのかは分かっているが、まだしっかりとお願いはされていないのだ、頷くわけにはいかない。オズは不満げな目を向ける。

「ねぇ、まだ? いい加減飽きたんだけど、早くしてくれない?」ゆっくりと繰り返される会話を聞かされ、うんざりしたようにオーエンが文句を言う。「いつまで俺様を此処に放置しておくつもりだよ」続けて不機嫌なブラッドリーも文句を連ねた。いつものように、無理やり従わされたのだろう。機嫌が悪いのも無理はない。

しかしオズが発言するまで動こうとしないターリア。オズにとってもそれは困る。オズは視線をさまよわせた後、ようやく口を開いた。


「私と来い」


しかし、放たれた言葉はいつも通りの言葉。けれどこれ以上引き延ばすのも、ターリアも面倒だ。


「・・・・・・まあ良いでしょう。及第点といったところね」


仕方がないとため息を一緒に言い、ようやく頷く。オズもそっと胸を撫でおろす。

「今回はこれで従ってあげるわ、オズ」ターリアが完全に同意を示したのを確認すると、オズは「ミスラ」と一言呼ぶ。それにムッとしたミスラが「俺に指図しないでください」と言いつつ、なにも無い空間に大きな扉を出現させた。