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02


一方で、魔法舎では怒涛の展開がなされていた。

賢者が召喚され、新しい魔法使いたちの召喚儀式を終えたころ、魔法舎を中央の人間たちが襲い掛かった。中央の城の人間を傷つけぬよう応戦する中、何人かの魔法使いたちに奇妙な現象が起こり、彼らは危機に迫っていた。しかしこのタイミングで新しい魔法使いたちが到着したこと、その中に中央の国を仕切る中央の国の王子アーサーがいたことで、事は治まった。

落ち着きを取り戻したころ、彼らはお互いを知るために改めて自己紹介を始めた。中央の国の魔法使い、西の国の魔法使い、東の国の魔法使い、南の国の魔法使いと順に紹介を勧め、最後の国が残った。


「最後に、北の魔法使いを紹介するとしよう」


北の国の魔法使いである、双子のスノウとホワイトが改めて自己紹介をしたのち、残りの魔法使いたちの名を挙げる。


「ブラッドリー、不在」
「オーエン、不在」
「ミスラ、不在」
「ターリア、不在」
「以上じゃ」


魔法舎に北の魔法使いは双子以外いない。いたはずのブラッドリーはどこかへ消えてしまった。

「北の魔法使いの方は、お忙しいのですか?」と純粋に聞くルチルだが、スノウは「お忙しいような・・・・・・」と、ホワイトは「お忙しくないような・・・・・・」と、困った表情を浮かべる。

北の魔法使いは孤高の者が多く、人と慣れ合うことがあまりないのだ。


「せめてターリアが居てくれれば良かったのじゃがなあ」
「ターリアが居れば安心じゃったのだがなあ」


スノウとホワイトが肩を落として、ぼやくように呟く。すると、ファウストが少し気まずそうに「彼女は、無事なのか」と控えめに尋ねた。


「うむ、それなりに回復したと聞いておる」
「だから気に病むことは無い、ファウスト」
「・・・・・・そうか」


無事を聞き、少し強張っていたファウストの表情が安堵へと変わった。

「それは良かった。私としても、彼女を失うのはとても悲しいですから」話を聞いていたシャイロックも、その知らせを聞き喜んだ。「俺もターリアがいなくなるのは寂しいからやだな〜」隣にいたムルも良かったと笑って、喜びを体現するように宙を舞う。

知らない名前を聞いた賢者が一人疑問に思っていると、それに気づいたカインが「賢者様はまだターリアに会っていなかったな」と口火を切った。


「ターリアは賢者に選ばれた、今回では唯一の魔女になる。北の魔法使いだが彼女は信頼して良い。」
「ターリア様は俺たち若い魔法使いのことを気にかけて下さる、優しい親切な方なんです」


北の魔法使いに警告を示したカインだが、ターリアには信頼をしめしているようだ。続いてヒースクリフもカインに同意を示した。

「うむ、ターリアはとても良い子じゃ。我らも鼻が高い」スノウはふたりの話を聞いて、自慢げに言った。「同じ女性同士、仲良くできるじゃろう。その時は仲良くしてやっておくれ」まるで親のようにホワイトが言う。


「ターリアは北というより、南や西の国と性質が似ています。ターリアもきっと、あなたのことを気に入るでしょう」


シャイロックも賢者に笑って、仲良くできるだろうと同意する。
彼らの反応を見るに、ターリアという女性が北の魔法使いにもかかわらず、周りに信頼されているのが、目に見えて分かった。

紹介が終わった後、賢者は手もとにある賢者の書をこっそりと開く。ページをめくっていくと、北の魔法使いについて書かれたページを見つけ、ターリアという名前を追った。賢者の書には、こう書かれていた。

『北の国の魔女。選ばれた魔女の中では古株。交流関係が広い。優しいお姉さんポジション。北というより南や西っぽいけど、オズや北の魔法使いたちでも頭が上がらない強者。北の魔法使いと一緒でもターリアいれば安全』

どうやら頼れるお姉さんのような人みたいだ。しかし、その片鱗には北の特性も見えるようだ。一体どんな人だろうと、賢者は指でその名前をなぞった。